不動産を売却する時、簿価がとても重要になってきますが、みなさんは「簿価」という言葉を聞いてもあまりピンとこないかもしれません。
「簿価」は、元は会計処理で使われる言葉で、「帳簿価格」を略したもので、不動産の簿価は帳簿上の価値を意味しています。原則、その不動産を購入した時の取得価格のことを指します。
今回は、不動産売却における簿価について詳しく解説します。
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簿価とは
簿価とは、先述したとおり帳簿価格のことで不動産のシーンでは不動産を購入した時の取得価格のことです。
不動産を売却する場面では、損益計算を行う上でとても重要な役割を果たします。
戸建てやマンションなどの不動産を購入した金額が簿価となるわけですが、そのうち建物の価値は新築時が最も高く、以降減価償却により価値は減少していきます。
減価償却とは、固定資産の価値が経年とともに減少していくのを耐用年数に分割して、毎年費用を計上する会計処理のことを言います。
対象となる固定資産は、建物や車、工場や機械設備などがあり。これらの資産を減価償却資産と言います。
この減価償却資産の簿価は、取得価格から毎年減価償却費を差し引いて計算します。建物は耐用年数を過ぎる頃には、減価償却費が取得価格を上回るので、帳簿上の価値はゼロとなります。
時価とは
不動産売却における簿価のお話をする時に欠かせないのは時価の存在です。
時価とは、不動産の現在の市場価値のことです。時価は不動産市場で取引される金額なので、簿価と時価が同じとは限りません。
例えば、5,000万円で購入した不動産が4,000万円に価格が下がった場合は、簿価は5,000万円、時価は4,000万円と言うことになります。
この時価は非常に景気に左右されやすく、一概に計算式で求められるものでもありません。時価を調べるにはいくつかの方法があります。
不動産鑑定士に評価を依頼する
国家資格である不動産鑑定士に評価をしてもらう方法です。
参考:不動産の「鑑定」と「査定」の違いを4つのポイントで分かりやすく解説
固定資産税評価額や相続税評価額から計算する
固定資産税評価額は時価の70%を目安に、相続税評価額は80%を目安に評価されていると言われています。
以下の式で簡単に計算できます。
時価=固定資産税評価額÷0.7
時価=相続税評価額÷0.8
あくまで参考程度です。
参考:不動産売却は相場を知ることから始めよう!宅建士が4つの調べ方を解説
不動産一括査定を依頼する
売却を考えているのであれば、査定から売却までの一連の依頼がまとめてできるの不動産無料一括査定がお勧めの方法です。
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参考:知識ゼロでも大丈夫!不動産売却・不動産一括査定について完全解説
簿価の重要性
簿価は不動産売却の場面でどのように使われるのでしょうか。やはり簿価が活躍する場面は、売却を見極める時と言っても良いでしょう。
みなさん、不動産売却を意識するときは、その不動産の時価を参考にしていると思います。そこで活躍するのが簿価です。
通常、時価と簿価の金額には違いがあります。不動産を取得した時の価格、つまり簿価よりも時価が上回る時が売却で利益が出るタイミングとなります。
例としては、開発や新しい駅や施設ができるなど、不動産を取得した時の簿価よりも時価が大きく上回るようなケースでは、かなりの利益が出るでしょう。
そして、簿価と時価を把握できていると、不動産売却を開始後、購入希望者からの値引き交渉で利益がマイナスになるような場面を避けることもできます。
投資用不動産の売却
不動産購入時の簿価よりも売却時の時価が上回ると利益が出ることは前述しましたが、投資用の不動産の場合は注意が必要です。
投資用不動産はローンを利用していることが一般的です。売却価格がその時点でローンの残債を上回れば売却益がでますが、投資用不動産には譲渡税がかかることを忘れてはいけません。
居住用の不動産では一定の条件を満たすと控除がありますが、投資用はそういった特例がありません。
先述した通り、建物のような減価償却資産は経年とともに簿価が下がっていきます。年数がかなり経った建物は減価償却が進んでおり、簿価がとても低くなっているケースも多くあります。
従って、購入した時と売却する時の価格差が大きくなるということです。この価格差は売却益となるので譲渡税の課税対象となり、売却益が高くなればなるほど税額もアップします。
高値で売却ができたとしても、多額の譲渡税が課されてしまうケースもあることも頭に入れておきましょう。
参考:収益物件の売却にかかる譲渡所得の計算方法と確定申告について解説
売却のタイミングは損益計算で見極め
不動産の売却を成功させるためには、損益計算をしてどの程度の利益が出るかを確認することが重要となってきます。
売却損益は以下の計算式で算出します。
譲渡費用とは、不動産を売却する際にかかる諸費用のことです。
具体的には、
- 不動産会社に支払う仲介手数料
- 売買契約書に添付する印紙代
- 測量費
- 建物の解体費用
- 売却するためのリフォーム費用
などです。
単純に売却金額から簿価を差し引いた金額が売却損益になるのではなく、売却するためにかかる諸費用も加算されます。
計算式から算出された売却損益がマイナスの場合は課税されません。
しかし、プラスとなった場合は譲渡税が課税されます。
不動産売却益(課税対象)の例
・所有している投資用マンションを4,000万円で売却
・簿価 3,000万円 譲渡費用 300万円
売却損益=4,000万円 -(3,000万円+300万円)= 700万円
売却益は700万円プラスとなるので、この700万円に課税されることになります。
簿価がわからない場合
不動産を取得したのがかなり昔だったり、相続した不動産であったりする場合、購入した当時の金額(簿価)がわからない時があります。
損益計算が出来ないので売却益が算出できず、譲渡税が課されるのか、もし課税されるのなら譲渡税がいくらになるのかがわからないといった不都合がでてきます。
その場合は、譲渡価格の5%を簿価とするよう、国税庁が定めています。
先程の例を参考に計算してみると、譲渡価格が4,000万円なので、
簿価=4,000万円×5%=200万円
売却損益 = 4,000万円 -(200万円+300万円)= 3,500万円
この計算方法だと、売却益がかなり高額になってしまい、譲渡税もかなり高くなってしまいます。なるべく不動産取得時の簿価が証明出来る書類を探してみましょう。
以下の書類が証明出来る書類となる例です。
- 住宅ローンの金銭消費貸借契約書や返済明細表等
- 住宅ローン返済口座の通帳等
- 物件購入の際に銀行振込をした通帳
- 購入時のチラシやパンフレット
- 登記簿謄本
簿価を把握して不動産売却を成功させよう:まとめ
不動産の簿価についての概要、そして売却を見極める際に簿価がどのように使われるのかを解説しました。取得してからの年数が経過しているほど減価償却が進み、簿価も下がります。
損益計算も忘れずにすることで、売却利益から想定外の税金を課されてしまった、というリスクも減らすことができます。
景気に左右されやすい時価と減価償却の進む簿価をしっかりと把握していれば、売り時を逃さずに不動産売却を成功させることができるでしょう。

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