【長屋の売却】ポイント・注意点など基本を分かりやすく解説

長屋

「長屋を売却する際の注意点は?」
「そもそも長屋は売却できるの?」

こんな疑問にお答えします。

多種多様な住まいの中で、売るのが難しいとされている不動産のひとつが長屋です。ひとつの建物を複数の部屋に分割しそれぞれ別の人が住む長屋は、権利関係が複雑なので中々うまく売却できません。

多くの場合、再建築不可や既存不適格物件と同様に相場より低い金額での売買になるため、長屋を高く売るためのポイントを知っておきましょう。

今回は、長屋の定義や長屋の売却に必要な基礎知識を分かりやすく解説していきます。

記事の信頼性
監修者:毎日リビング株式会社 代表取締役・宅地建物取引士 上野 健太
不動産業者としての実務経験を活かし、売主の立場で記事を監修しています。
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長屋式の住宅とはひとつの家を複数人で所有している住まいのこと

長屋式の住宅とは、ひとつの物件に複数の部屋がある住まいのことです。

「大きな建物の中に複数の世帯が住んでいる」という意味では、マンションやアパートといった共同住宅と同じだと感じる人もいるでしょう。

しかし、いわゆる長屋と共同住宅は、「共用部分があるかどうか」という点で大きな違いがあります。

マンションやアパートの場合、各戸が完全に区分けされているだけでなく、ホールやエレベーター、階段といった共用設備を備えているのが一般的です。

しかし、長屋の場合は、部屋と部屋をへだてる壁で空間を区切っているだけ。

土地も建物も、基本的にはその部屋に住んでいる住人が所有権を持っていますし、玄関を出たらすぐ外なので、「隣人と共有する空間」がありません。

長屋は、元々限られた土地を最大限広く使うために活用されてきた住まいの形です。

本来、家を建てる場合、「接道義務」といって、最低でも2メートル以上敷地が道路に接している必要があります。

例えば、4分割すれば4棟の一戸建てを建てられる長方形の敷地があったとしましょう。この土地の一辺だけが道路に接している場合、道路側の土地にしか建物を建てることができません。

しかし、あえて土地を区切って4棟の家を建てるのではなく、長方形の大きな家を建てて内部を扉や壁で区切ると、接道義務をクリアすることができます。

長屋式住宅は、法律の制限をクリアしつつ、できるだけ多くの世帯が住めるようにした物件なので、一般的な住宅とは扱い方が変わってきます。

複数人の所有物だからこそ長屋の売却は難しい

話し合い

長屋は、基本的に住民一人のものではありません。正式な所有者が複数いるため、長屋の売却には各所有者の同意や、利益の調整が必要になってきます。

長屋の売却は各所有者の同意が必要

長屋を売却する際に、もっとも重要なのは売却許可の取得です。長屋自体はひとつの建物なので、一人の住民がすべての権利を持っているわけではありません。

多くの場合、あくまでも「家の一部を所有している」という形になっているため、他の住民から同意を得ずに売却すると、「他人の財産を勝手に売ってしまった」というトラブルになってしまいます。

建物の構造に影響を与えない程度の小規模なリフォームや修繕ならともかく、不動産の売却は住宅全体に影響を与える手続きです。

自分が売りたいと思っていても、他の住民が家を売りたいと考えているとは限らないので、売却手続きとは別に住人の説得も必要になってきます。

リフォーム・修繕・建て替えにも同意が必要なのでメンテナンスが不足しがち

長屋の売却を困難にする理由のひとつが、大規模なリフォームや建て替えにも住人の同意が必要になることです。
どのような住まいでも、長年利用していると老朽化してくるため、定期メンテナンスが必要になってきます。

しかし、外壁の塗り直しや亀裂の入った壁の補修といった工事も、タダでは依頼できません。

残念なことに、現代に残っている長屋は古いものが多く、住民の平均的な年齢層も高めなので、「多少古くなっていても、住めるならお金をかけてまでメンテナンスしたくない」と考えています。

適切にメンテナンスされていない建物の資産価値は、下がっていく一方です。

当然のことながら、定期的にお金をかけてメンテナンスされている物件と、メンテナンスされていない物件では、前者のほうが高額売却しやすいので、長屋を売る場合はメンテナンスの状況にも気を配る必要があります。

長屋には古い建物が多く老朽化の関係で売りづらい

長屋は、法律の制限を何とかクリアするために使われていた住宅の仕様なので、古い建物が多いです。

場合によっては、耐用年数を迎えていてほとんど建物としての資産価値がなかったり、古すぎて現行の耐震基準を満たしていなかったりする物件も少なくありません。

中古の不動産は、築年数に応じて資産価値や査定額が変わります。古ければ古いほど補修や維持・管理が大変になってきますし、補修費用も高額になっていくため、古い物件はよほど立地が良くないと売りづらいです。

適切にメンテナンスされていても、築年数が古いとそれだけで売却の難易度は高くなってしまいます。

本人所有ではなく借地権の物件も少なくない

自分が住んでいる土地と建物を自分で所有している場合、他の住人から同意を取れば長屋を売却可能です。

しかし、地主が持っている土地を借りて、そこに自分のお金で家を建てている「借地権」と呼ばれる状態だと、住民の同意だけでは家を売却することができません。

長くなるため詳しい説明は省略しますが、借地権の物件を売るときは、土地の所有者である地主との交渉が必要になってきます。

住人が変わらなければ安定した土地の賃料収入が入ってくるので、借地権の売却をいやがる地主は多いです。

許可を得るためには、見返りとして地主側へ礼金を支払う必要があるため、借地権売却は難易度がさらに高くなってしまいます。

参考:借地権の3つの売却方法と相続税評価額の計算方法を徹底解説!

許可を得てから売却しよう!長屋を売却する方法

引き渡し

長屋を売却する場合、以下のような方法を取るのが一般的です。

  • 自分の持ち分を不動産市場で売却する
  • 更地にして売却する
  • 借地権の場合は地主や隣家の所有者に売る

自分の持ち分を不動産市場で売却する

自分が住んでいる長屋の建物と土地は、自分の意思で売却できます。

ただし、長屋は建て替えやリフォームが不自由です。

購入後の活用方法やメンテナンスも大幅に制限されてしまい、防災上の不安もあるため、売却するときはプロの不動産会社を頼ると良いでしょう。

手続き的には、自分の不動産を自分の力だけで売ることも可能ですが、現実的に考えると、未経験者が不動産の広告を作ったり各種契約書を作ったりするのはおすすめできません。

また、接道義務(住まいの敷地が2メートル以上道路に接していること)を果たせるなら、各所有者の了解を得たうえで家を切り離す工事を行い、一戸の住まいとして売却することもできます。

参考:不動産売却を個人で行うメリット・デメリット【仲介してもらう方が安全】

長屋を解体し更地にしてから売る

長屋を売却する方法として、おすすめしたいのが解体工事との組み合わせです。

長屋は、様々なデメリットを抱えています。そのため、同じような広さ・立地の不動産に比べて売却価格は低くなってしまうケースが多いです。

しかし、全住人の許可を得て長屋を解体してしまえば、ただの空き地として売却することができます。

建物を解体することで土地活用の幅も広がりますし、不動産会社等のプロにも売り込めるようになるため、立地さえ良ければ解体後のほうが不動産を売りやすくなるでしょう。

地主や隣家の所有者に売る

住んでいる長屋が借地権なら、第三者ではなく関係者に売るという手も使えます。取り扱いが難しく、制限の多い借地権物件は、そのまま市場に出しても中々売れません。

しかし、扱いが難しくても、建物や土地の利用権を活用できる人に売る場合は話が別です。

土地の所有者である地主なら、売却した土地を好きに活用できますし、隣家の所有者なら、買い取った借地権を使って住まいの増改築等をすることができます。

多くの場合、一般市場での売却より取引額は安くなりますが、使わない不動産を持っていても維持費で損をするだけです。

不動産は持っているだけでも毎年税金という維持費がかかるため、遠方の長屋を相続した、長屋から出ていくため今後住む予定がないといった人は、相場より安くても関係者に売却しましょう。

長屋を高く売却するポイントは隣家の買取など

他の家を買い取って自己所有物件にしたり、リフォームやリノベーション等で魅力を底上げしたりすると、長屋の高額売却を狙いやすくなります。

他の家を買い取ってから売却する

長屋売却の問題点は、権利関係が複雑なことです。

他の住人と交渉して土地・建物を買い上げ、すべて自分のものにしてしまえば、他の住人に気を使う必要はありません。

一般的な住宅と同じように売却手続きを進められますし、更地にしてから売却するのも自由です。

リフォームやリノベーションで魅力を底上げする

住人の同意は必要ですが、リフォームやリノベーションをして住まいの魅力を底上げするという方法もあります。

住宅そのものが適切にメンテナンスされていたり、建築基準法の基準をクリアしたりしていれば、古い住まいでも好条件で売却できるでしょう。

参考:不動産売却前にリフォームを行うメリット・デメリット【高額リフォームは要注意】

長屋を売却するときの注意点は住宅ローンの利用が難しいこと

長屋を売却する際の注意点として覚えておきたいのは、多くの場合住宅ローンを利用できないという点です。

住宅ローンは、「返済を滞納したら家を売却してローンを回収する」という担保があるからこそ、お金を貸してもらえます。

その点、長屋は築年数が古く、建て替え等も自由にできないので、担保としての価値がそれほど高くありません。

様々な事情から住宅ローンの利用が難しいため、現金一括決済や、金利の高いノンバンク等での借り入れが主な支払い方法になってしまいます。

ローンを組んで家を買うという、もっとも数の多い層に物件を広告できないのは大きなデメリットといって良いでしょう。

長屋のデメリットを理解して少しでも有利な条件で売却しよう:まとめ

ひとつの建物に対して複数のオーナーが存在する長屋は、一般的な不動産よりも売るのが難しいです。

また、古い建物が多く、中々高く売却することができませんし、住宅ローンの利用も制限されてしまいます。

ただし、長屋売却の基本を理解すれば、隣家を買い取ったり、建物を解体したりして売却金額を底上げすることも可能です。

売り方や戦略次第で長屋の売却金額は大きく変わってしまうので、長屋を売るときは売却プランの準備に力を入れましょう。

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