「不動産売却で交わす『売買契約書』にはどんなことが書かれているのだろうか?」
「重要事項説明書とは何が違うのだろう?売主としてどこをチェックしておけば損やトラブルを防げるのだろうか?」
不動産売却の最終局面で交わす「不動産売買契約書(宅建業法第37条書面)」は、売主と買主が取引の条件や約束事を法的に確定させるための最も重要な書類です。
結論から言うと、不動産売買契約書は単なる取引の記録ではなく、売却後の手付解除リスクや契約不適合責任(旧:隠れた瑕疵担保責任)などのトラブルから売主を守るための法的な防衛線となります。
今回は、売買契約書の役割から重要事項説明書との違い、記載される主な条項、売主が契約前に必ずチェックすべき重要ポイントまで宅建士が詳しく解説します。
不動産売買契約書とは?重要事項説明書との違い
不動産売買契約書とは、売主と買主が不動産の売買合意に達した際に、取引価格や支払い時期、引き渡し日、双方の権利と義務などを明記して交わす法的な契約書面です。
不動産取引では「重要事項説明書」と「売買契約書」の2種類を扱いますが、それぞれの役割は明確に分かれています。
| 書類名 | 主な役割と目的 | 記載内容の例 |
|---|---|---|
| 重要事項説明書 (宅建業法第35条) | 取引対象物件の「ありのままの状態・リスク・法令制限」を事前開示し、買主に購入判断をさせる書面。 | 登記情報、用途地域、道路関係、インフラ、各種災害リスク・盛土規制など。 |
| 不動産売買契約書 (宅建業法第37条) | 売主と買主の間で交わす「取引の約定(約束事)」を確定させ、契約を成立・履行させるための法的書面。 | 売買代金、手付金額、引き渡し時期、解除条件、契約不適合責任の範囲など。 |
※重要事項説明書の詳細やチェックポイントについては「【重要事項説明書】不動産売却で失敗しないための注意点とチェック項目」で詳しく解説しています。
急増中!不動産売買の「電子契約」とは?(印紙代が0円に)
2022年5月の宅地建物取引業法改正により、不動産取引における「売買契約書」および「重要事項説明書」の完全電子化(書面のデジタル化)が可能になりました。
従来の紙と印鑑による契約だけでなく、スマホやパソコン上で電子署名を行って契約を完結する「電子契約」を採用する不動産会社が増えています。
電子契約のメリット
- 印紙税(収入印紙代)が不要(0円になる): 紙の契約書に貼る必要があった数万円〜数十万円の収入印紙代が不要になります(節税効果大)。
- 自宅から署名・契約ができる: 遠方に住んでいる場合でも、移動時間や交通費をかけずに契約作業が可能です。
- 書類の保管・紛失リスクがない: クラウド上に安全に保管されるため、紙のように紛失・劣化する心配がありません。
電子契約の注意点・デメリット
- 事前に当事者全員の合意が必要: 売主・買主・不動産会社のいずれか1人でも「紙が良い」と希望した場合は、従来の紙の契約書になります。
- IT環境(メールアドレスや端末)が必要: スマホやパソコンの操作、メール受信環境が必須となります。
- 重要事項説明(IT重説)の実施: 電子契約の場合でも、契約前に宅建士からオンライン(Zoom等)または対面で重要事項説明を受ける必要があります。
不動産売買契約書に記載される主な項目一覧
一般的な不動産売買契約書(標準約款)には、主に以下のような条項が盛り込まれます。
- 売買標記欄:売買対象物件の表示(地番・家屋番号)、売買代金、手付金額、内金・残代金の額
- 支払いと引き渡し:売買代金の支払期日、所有権移転および物件の引き渡し時期
- 公租公課の清算:固定資産税・都市計画税などを引き渡し日基準で日割り清算する規定
- 手付解除:一定の期日までであれば、手付金の放棄(買主)または倍返し(売主)により契約解除できる規定
- ローン特約(住宅ローン不成立時の解除):買主の住宅ローン審査が通らなかった場合に無条件で白紙撤回できる規定
- 契約違反による解除・違約金:売主・買主のどちらかが義務を履行しなかった場合の違約金額設定(代金の10〜20%が一般的)
- 契約不適合責任:引き渡し後の不具合(雨漏り・構造不備など)に対する売主の修繕義務や担保責任の範囲・期間
- 危険負担:契約締結後から引き渡しまでの間に天災などで建物が流失・損壊した場合の負担取り決め
- 特約事項:個別取引に応じた特殊な条件(現況有姿売買、越境物の取り扱い、農地転用などの停止条件)
売主が売買契約書で必ずチェックすべき5つの重要ポイント
契約書は不動産会社が作成しますが、提示された内容をそのまま鵜呑みにすると、売却後に予想外の金銭的リスクを抱える恐れがあります。
事前に必ず以下の5点を確認しましょう。
1. 「契約不適合責任」の範囲と期間(免責条項)
売主にとって最もトラブルになりやすいのが「契約不適合責任」です。契約内容と異なる不具合が売却後に見つかった場合、修繕請求や代金減額請求をされるリスクがあります。
個人売主の場合、引渡後「2〜3ヶ月間」に限定するか、築年数が古い物件や訳あり土地の場合は「契約不適合責任を一切負わない(免責特約)」設定になっているか確認してください。
参考:不動産売却時の契約不適合責任(瑕疵担保責任)について3つのポイントで解説
2. 「手付解除」の期日と手付金額
契約締結後、理由なく契約を解除できる「手付解除期日」が長すぎないか確認します。期日が長すぎると、売主は引き渡し直前まで解約のリスクに晒されることになります。
参考:不動産売却の際に聞く「手付金」とは?宅建士が3つのポイントで解説
3. 「住宅ローン特約(白紙解除)」の期限設定
買主がローン審査に落ちた際、契約を無条件解除できる「住宅ローン特約」の期限設定も重要です。
期限が曖昧だったり、残金決済の直前に設定されていたりすると、売主側の買い替え計画や資金計画が破綻するおそれがあります。
参考:不動産売却時のトラブル【ローン特約編】事例を知って事前に回避!
4. 「固定資産税・都市計画税」の清算日基準
起算日(関東では1月1日、関西では4月1日など地域差あり)や、引き渡し日当日をどちらが負担するかなどの清算方法が明記されているか確認します。
参考:固定資産税の計算方法と不動産売却時の精算について【宅建士が解説】
5. 「特約事項」に約束した条件が漏れなく入っているか
「残置物の撤去負担」「境界確定の要否」「現況有姿での引き渡し」など、売主と買主の間で取り決めた個別条件がすべて特約欄に明記されているかをチェックします。
参考:不動産売却では残置物がトラブルを招く!【処分方法とコツを解説】
停止条件付き契約や差押物件を売却する場合の注意点
特殊な事情のある不動産を売却する場合、売買契約書に「特別な特約や手続」を明記しておく必要があります。
農地転用や開発許可を要する「停止条件付き契約」
売買対象が農地(農地転用が必要)であったり、開発許可を前提とした土地であったりする場合、「しかるべき行政の許可が下りたら契約の効力が生じる」という『停止条件付き契約』を結びます。
この場合、条件成就の期限と、許可が下りなかった場合の白紙撤回条項を明確に記載しておく必要があります。
参考:【不動産売却】停止条件とは?特約の書き方・解除との違いとトラブル防止策
競売・差押えリスクがある物件の同時決済
差押えや登記上の競売開始決定がついている物件を売却する場合、売買代金の受領と同時に差押えを抹消・取り下げる「同時決済手続き」に関する取り決めを契約条項へ確実に盛り込む必要があります。
まとめ:売買契約書の内容を事前確認し、安心できる不動産売却を
不動産売買契約書は、取引を完結させ、売却後の法的リスクから売主を守るために不可欠な書類です。
- 売買契約書は取引価格や引き渡し日、双方の権利義務を法的に確定させるもの
- 売主は特に「契約不適合責任の範囲・期間」「手付解除・ローン特約の期限」を念入りにチェックする
- 契約日当日に初めて確認するのではなく、事前にドラフト(控え)を入手して目を通すことが大切
売買契約書で失敗しないためには、売主の立場に立って親身に相談に乗ってくれる調査力・提案力のある不動産会社選びが欠かせません。






















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