5分でわかる!3,000万円特別控除とは?【相続空き家編】

  • 相続した実家を売却したいけど、税金はかかるの?
  • 相続した空き家の譲渡所得税の控除制度について知りたい
  • 相続した住居を売却したら、どのくらい税金が控除されるの?

 

こんな疑問にお答えします。

不動産を売却すると、原則として利益が出た部分に対し「譲渡所得税」や「住民税」がかかります。
実家を相続して空き家を売却した場合などでも、利益が出たら基本的に税金が発生します。

ただし一定の要件を満たせば、「被相続人の居住用財産(空き家)を売却したときの特例」が適用されて、最大3,000万円までの譲渡所得(利益)に対しては課税されない扱いとなります。

今回は、相続した空き家を売却したときに適用される「3,000万円の特別控除」がどのようなケースで使えるのか、利用方法・注意点を含めて詳しく解説していきます。

記事の信頼性
監修者:毎日リビング株式会社 代表取締役・宅地建物取引士 上野 健太
現役の不動産業者としての実務経験を活かし、売主の立場で記事を監修しています。
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被相続人の居住用財産を売却したときの特例とは

「被相続人の居住用財産(空き家)を売却したときの特例」とは

相続や遺言によって家を受け継いだ人が、相続後に空き家を売ったときに発生する「譲渡所得税」や「住民税」が控除される制度です。

空き家をそのまま売却する場合だけではなく、空き家を取り壊して更地にしてから売却するケースにも適用されます。その場合、土地売却代金にかかる譲渡所得税や住民税が控除対象となります。

一般に住宅などの不動産を売って利益が出ると、利益部分に対して譲渡所得税がかかります。税率はケースによって異なりますが、譲渡所得税と住民税を合わせて15~39%程度です。

たとえば一般の長期譲渡所得(10年以上不動産を所有している場合)で税率が20%のケースにおいて、1,000万円の利益が出たら、1,000万円×20%=200万円もの税金が発生します。

ただし相続した空き家の特例を利用すると、3,000万円までの利益に対する税金がかからなくなります。

つまり家を売却したことによって3,000万円までの利益であれば、譲渡所得税や住民税が発生しないので、先ほどの1,000万円の譲渡所得の事例では無税となります。

相続した空き家売却特例の適用期限

相続した居住用資産売却特例は、どのようなケースでも利用できるわけではありません。
まずは「期間」の制限があります。

制度自体の期限

まずこの制度自体の制限があります。

現時点では、この特例が適用されるのは令和9年(2027年)12月31日までに居住用資産を売却した場合です。

親などから家を相続して空き家になっている方は、期限内に売却を済ませてしまわないと、この特例による税金控除を利用できなくなります。

制度を利用するための期限

被相続人の居住用資産売却の控除制度を利用する「要件」としての売却期限もあります。

具体的には「相続が開始した日から3年を経過する日の属する12月31日まで」に売却しなければなりません。
つまり親などが亡くなってから3年経った年の年末までに売却を決めてしまわないと、税金控除を受けられません

家そのものの条件

特例が適用される「空き家」そのものにも以下の条件が設定されています。

相続開始の直前に、被相続人が実際に居住していた

亡くなった方が死亡前に実際に住んでいたことが必要です。もともと空き家だった不動産や賃貸物件を相続しても、控除は適用されません。

昭和56年5月31日以前に建築された

新耐震基準適用前の古い家であることが必要です。

区分所有建物(マンションなど)として登記されていない

マンションは適用対象外です。土地付き戸建てなどを相続した場合が対象です。

相続開始の直前、被相続人以外に居住していた人がいない

亡くなった方が、死亡前にお一人で住まわれていたことが必要です。同居人がいた場合には適用対象外となります。

令和5年度の税制改正
①現行の措置を4年間(令和6年1月1日~令和9年12月31日)延長
②売買契約等に基づき、買主が譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに耐震改修又は除却の工事を行った場合、工事の実施が譲渡後であっても適用対象とする。
③相続人の数が3人以上である場合における特別控除額を1人あたり2,000万円とする。
④その他所要の措置

その他の要件

上記以外にも、相続した空き家の控除特例を利用するには以下の要件を満たす必要があります。

相続時から売却時まで空き家で、事業や貸付け、居住に使われていない

相続発生時から売却時まで、誰も使っておらず住んでいないことが必要です。いったん賃貸などで活用してしまったら対象外です。

譲渡の際、一定の耐震基準を満たしている

建物を売却する場合には、現在の耐震基準を満たす必要があります。更地にせずに建物ごと売却するなら多くのケースで「リフォーム」が必要です。

売却金額が1億円以下

1つの土地を複数の相続人が相続した場合などで、共有者となっている相続人が1人1人売却する場合でも「合算」で1億円が評価されます。つまり1人の相続人の売却部分が1億円以下でも他の相続人の売却部分と合計すると評価額が1億円を超える場合、控除の適用外となります。

売った家について、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていない

こうした別の特例を適用済みである場合、重ねてこの控除を利用できません。

同じ被相続人から相続又は遺贈により取得した不動産について、この特例の適用を受けていない

別に居住用不動産を相続してすでにこの控除制度を適用していたら、2軒目の家には特例を適用できません。

親子や夫婦などの親族や特別の関係がある人に対して売ったものでない

生計が同じ親族や内縁関係、密接な関係のある法人などに売った場合にも特例の適用はありません。

特例を適用するための手続き

相続した空き家の譲渡所得税控除特例を利用するには、家を売却した翌年に「譲渡所得税の確定申告」をしなければなりません。

確定申告は、売却の翌年2月16日~3月15日までの間に所轄の税務署にて行います。期限内に申告しないと控除が適用されなくなって高額な税金がかかってしまうおそれもあるので注意してください。

その頃になると、税務署から確定申告に関する案内書が届くケースもありますが、たとえ何も来なくてもきっちり申告をしましょう。

不動産売却後の確定申告に関する詳しい記事は下記をご覧ください。

>>不動産を売却したら確定申告が必要?3つのポイントで徹底解説

以下では建物をそのまま売却した場合と、建物を取り壊して更地で売却した場合に分けて、確定申告の必要書類をご紹介していきます。

建物と土地を両方売却した場合

土地建物を売却した場合の必要書類
  • 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)

国税庁のHPなどで書式をダウンロードして自分で作成します。

  • 土地建物の登記事項証明書等

売却した人が空き家を相続または遺贈で取得したこと、売却した資産が昭和56年5月31日以前に建築されたこと、売却した家がマンションではないことがわかるものが必要です。
登記事項証明書は法務局で取得します。実際に法務局に行って申請しその場で取得することもできますし、郵送やネットによる申請も可能です。

  • 被相続人居住用家屋等確認書

売却した不動産所在地の市区町村で交付申請をして発行してもらいます。
相続開始の直前に被相続人が1人でその家に住んでいたことと、相続開始後売却時まで家に誰も住んでおらず賃貸や事業にも使われていなかったことを証明してもらうための書類です。

  • 耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書

控除の適用条件である耐震基準を満たしていることを証明する書類です。コピー可です。

  • 土地建物の売買契約書の写しなど

空き家の売却代金が1億円以下であることを証明するための資料です。

家を取り壊して敷地のみ売却した場合

土地だけ売却した場合の必要書類
  • 譲渡所得の内訳書
  • 土地建物の登記事項証明書
  • 売却した土地の売買契約書の写し
  • 被相続人居住用家屋等確認書

建物については、相続開始直前に被相続人が1人で居住しており、建物取り壊し時まで誰も利用していなかったことを証明してもらいます。

土地については建物取り壊し後売却時まで貸付や居住、建築敷地などに利用されていなかったことを証明してもらう必要があります。

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相続した空き家の3,000万円控除 よくある質問Q&A


控除制度の概要だけではわからない、いろいろな疑問があるでしょう。
以下では相続した空き家の3,000万円控除制度について、よくある質問にお答えしていきます。

Q.なぜ昭和56年5月31日以前に建築された建物に限られるのですか?1日でも遅かったら適用されないのでしょうか?

A. 昭和56年6月1日から建築物に「新耐震基準」が適用されるようになったためです。それより前は「旧耐震基準」となっており、建物の強度が低く危険です。
そこで国は、危険な建物を取り壊すか改修工事によって新耐震基準を満たすよう推奨しています。

取り壊しや耐震基準を満たしたケースに税金控除を適用することによって、旧耐震基準の建物をなくそうというのがこの制度の狙いです。
昭和56年6月1日以降に建築された建物については、制度の適用はありません。

Q.リフォームして売るのと更地にして売るのとどちらが得なのでしょうか?

A. ケースバイケースです。リフォームにかかる費用と建物解体にかかる費用を比較して決めると良いでしょう。

昭和56年以前に建築された建物は、すでに築年数が40年以上になっています。しかも当時の建築物はほとんどすべて木造で、かなり老朽化が進んでいるはずです。

これを現在の耐震基準を満たすよう改築するとなると、かなり大規模なリフォームが必要になって費用がかさむ可能性が高まります。リフォーム費用をかけたからと言って、その分売買価格に上乗せできるわけではないので、売主の持ち出しになってしまうでしょう。

一方建物を解体すると解体費用がかかりますが、リフォーム費用よりは安く済むケースも多いです。ただし、どちらが得になるのかはケースバイケースです。
リフォームと解体の両方の見積もりを取って比較するのが良いでしょう。

不動産売却前のリフォームに関する詳しい記事はコチラから

>>不動産売却前にリフォームを行うメリット・デメリット【高額リフォームは要注意】

Q.建物を解体するときやリフォームするとき、補助金を使えますか?

A. 耐震基準を満たしていない建物のリフォームや解体工事には、自治体によって補助金制度が設けられています。詳しい内容は物件所在地の役所に問い合わせてみて下さい。

Q.建物を解体するタイミングはいつが良いですか?

A. 土地上に建物がある場合、土地の固定資産税や都市計画税が大きく減額されています。早期に建物を取り壊してしまったら、この軽減措置がきかなくなって税金が跳ね上がってしまうおそれがあります。

そこで、建物を取り壊すのは土地売却が具体的に決まってからにした方が良いでしょう。早期に取り壊してなかなか土地が売れなかった場合、高額な固定資産税の負担がかかってしまうおそれがあります

Q.買主がリフォームや取り壊しをする場合、控除は適用されないのですか?

A. 耐震基準を満たしていない建物をそのまま売り、買主がその後に建物を取り壊したりリフォームしたりする契約内容では、3,000万円の被相続人の居住用資産売却特例が適用されません。
譲渡所得に対する税金がかかってしまうので、必ずそういった措置は売主側で済ませてから売却しましょう。
ただし、令和6年1月1日以後に譲渡する場合は、売買契約等に基づき、買主が譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに耐震改修又は除却の工事を行った場合、工事の実施が譲渡後であっても適用対象となります。

Q.期限の計算方法がよくわかりません。2020年6月に発生した相続についてはいつまでに売却すれば良いのですか?

A. たとえば2023年5月に相続が発生した場合には、2026年の12月31日までに売却すれば適用されます。2019年以前に発生した相続については、すでに2022年12月31日をもって期限が切れているので控除が適用されません。

Q.被相続人が老人ホームなどの介護施設に入っていた場合にはどうなりますか?

A. 従来、この制度を適用するためには、被相続人が相続発生直前まで現実に家に居住している必要があり、老人ホームなどに入居していた場合は適用外でした。
しかし、平成31年4月1日から制度が改正され、介護施設に入所していても以下の要件を満たしていれば、控除制度が適用されるようになりました

  • 被相続人が要介護認定等を受け、相続発生直前まで施設に入居していた
  • 被相続人が老人ホームに入所してから相続発生直前まで、家を事業や貸付けなどの別目的に使用していない

Q.他の相続人と共有になっている場合はどうなりますか?

A. 共有者としての相続人がそれぞれ控除を受けられます。

たとえば長男と次男が実家を共有しておりそれぞれが2,000万円で売却した場合、長男については2,000万円、次男については2,000万円の控除が適用されて、二人とも税金は0円になります。
ただしこの制度には「1億円」の制限があります。たとえば長男が6,000万円、次男が6,000万円合計1億2,000万円の土地を売却してしまったら、控除制度自体の適用ができなくなります。

共有名義の不動産売却に関する詳しい記事はコチラから

>>共有名義の不動産ってどう売ればいいの?売却時の注意点について

Q.賃貸との併用住宅の場合はどうなる?

A. 賃貸併用住宅の場合、賃貸人が建物内に居住することになるので「被相続人が一人で居住していた」の要件を満たしません。そこで控除は適用されません。

「マイホームを売る場合の3000万円控除の特例」のケースでは賃貸併用住宅でも居住部分の割合に応じて控除が適用されますが、相続のケースと異なる扱いとなっているので注意が必要です。

参考:5分でわかる!3,000万円特別控除とは?【マイホーム売却編】

Q.売却によって損になった場合、確定申告しなくて良いのですか?

A. 譲渡所得がマイナスになることを「譲渡損失」といいます。確定申告の義務はありませんが、譲渡損失が発生したら給与所得などの他の所得と差引して税額を減らすことが可能です。
このことを「損益通算」といいます。

確定申告で損益通算すれば所得税や住民税が低くなってお金が返ってくることもあるので、マイナスのケースでも申告はした方が良いでしょう。

Q.譲渡所得税と住民税の違いがよくわかりません

A. 譲渡所得税は、不動産を売却したときに発生する税金です。不動産を売った売却金額からかかった費用や不動産の取得費用を引いた「利益」に対して一定の税率をかけて計算します。

一方住民税は、その人の前年度の所得に応じてかかる地方自治体の税金です。所得が高い人ほど住民税も高額になります。
これらは異なる税金ですが「所得税がかかると住民税もかかる」ので、セットで説明されることが多いのです。
なお確定申告するのは譲渡所得税のみで、住民税はその後6月頃に自治体が決定して納付書が送られてきます。会社員の方の場合には基本的に給与から天引き(特別徴収)されます。

税率は、所有期間が短期間(5年以下)の短期譲渡所得なら所得税と住民税の合計で39%、5年以上の長期譲渡所得なら合計で20%程度です。

相続した居住用不動産の控除特例を適用しない場合、5年以上保有していたら長期譲渡所得として20%の譲渡所得税と住民税を払わねばなりません。

参考:不動産売却は短期譲渡・長期譲渡のどちらがお得?税率や売却のしやすさを徹底比較

Q.この特例は、2023年12月31日までしか適用されないのですか?その後延長される可能性はありませんか?

A. 令和5年度税制改正大綱で、相続空き家の特例の適用期間が、4年間(令和6年1月1日から令和9年12月31日)延長されることが公表されました

不動産を相続したらまずは不動産会社に相談:まとめ

古い空き家を相続した場合、活用するのも大変ですし売却したいと考える方も多いでしょう。
ただ不動産の売却には手間がかかりますから「後でいいか…」と考えてなかなか売却に取りかからない方が多いのも事実です。

しかしそうすると3,000万円の控除特例の適用期限を過ぎてしまい、高額な譲渡所得税が発生してしまう可能性も高まります。

被相続人の居住用資産の3,000万円控除特例の適用期限は、相続が発生した日から3年を経過する日の属する12月31日までです。

ただ、売り急いで損をするのは本末転倒。必ず不動産会社に相談して、不動産売却を成功させてください!

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