不動産売却前に知っておくべき「分筆」について3つのポイントで解説

土地を分ける

「不動産売却前に分筆をする際の注意点は?」
「そもそも不動産売却前に分筆をするメリットはある?」

 

こんな疑問にお答えします。

不動産における「分筆」とは、ひとつの土地を複数に切り分け、それぞれ別の土地として登記することです。

共有持分で管理する予定の土地や、事情があってそのままの状態では売却するのが難しい土地を不動産売却前に分筆すれば、より有利な条件で売却できるようになります。

ただし、土地の分筆は、時間もかかりますし費用もかかります。気軽に利用できる手続きではないので、不動産売却前で分筆を利用するメリットや注意点を知っておきましょう。

今回は、分筆の定義や基本的なルールについて分かりやすく解説していきます。

記事の信頼性
監修者:毎日リビング株式会社 代表取締役・宅地建物取引士 上野 健太
不動産業者としての実務経験を活かし、売主の立場で記事を監修しています。
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分筆とはひとつの土地を複数に分割する手続きのこと

分割した土地の所有

分筆とは、ひとつの土地を複数に分割する手続きのことです。

多くの人にとって聞きなれない単語だと思いますが、不動産の世界では土地を「筆」という単位で数えます。「一筆の土地を分ける」から分筆という名前になっていると考えれば分かりやすいでしょう。

ただし、土地はケーキのように簡単に二等分にしたり四等分にしたりすることができません。

土地の場合、境界線を確定させ、登記を変更するという法的な手続きが必要不可欠なので、まずは分筆の定義や期間、費用を押さえていきましょう。

分けた土地を個別に登記すると分筆・登記しないとただの分割

分筆について理解するうえで重要なのが、「分筆」と「分割」の違いです。

分筆も分割も、ひとつの土地を複数に分割するという意味では違いがないように感じる人もいるでしょう。

しかし、両者には「分けた土地を登記するかどうか」という大きな違いがあります。

分筆は、分けた土地をそれぞれ別の土地として登記する手続きです。そのため、Aという土地を2つに分筆した場合、Aに加えて新しくBという土地が誕生します。AとBはまったく別の土地なので、分筆すると住所も分かれますし、固定資産税の課税も土地ごとです。

一方、ただの分割手続きだと、実質的に土地を分割していたり、2人で半分ずつ所有していたりしても、登記上そこにはAという土地しか存在しません。Aという土地の所有権(持分)を分割して売った場合、ひとつの土地を2人で共有する形になるのです。

ほかの人と共有している土地は、「自分の持分」を売ったり相続したりすることは可能ですが、土地全体を売却する場合は所有者全員の同意を求められます。

このように、分割による土地の共有管理は、制限が多くトラブルになりやすいため、土地を分けて売りたいなら、分割ではなく分筆をしてから不動産売却手続きを始めるのがおすすめです。

分筆手続きにかかる期間は1ヶ月ほど

調査の難易度にもよりますが、土地の分筆には1ヶ月ほどかかります。

ただし、分筆手続きでは「境界線を確定させる」ことがもっとも重要なので、隣地の所有者と連絡を取れなかったり、境界線の扱いについてトラブルになったりすると、半年近くの時間がかかってしまうことも少なくありません。

逆に、あらかじめ隣地との境界線が確定している場合、土地を分割して境界線を設定し、登記をするだけでよいので、2週間ほどで分筆できる場合もあります。

分筆の手数料は安くても30万円以上

土地の分筆にかかる費用は、安くても30万円以上かかると思っておきましょう。

境界線を確定するために必要な測量費や、境界線を証明するために用意する書類の作成費、測量費等を合わせると、数十万円かかります。

また、登記の手続きを司法書士に依頼する場合、5万円程度の依頼料も必要です。

諸々を合計すると、土地によっては分筆だけで100万円以上の費用が必要になることもあるので、分筆手続きをすべきかどうかは慎重に考えましょう。

参考:土地売却における「測量」の必要性や流れ・費用について徹底解説

不動産売却前に土地を分筆するメリットは価格や権利関係の調整など

分譲地

不動産売却前の土地を分筆するメリットは、以下のとおりです。

  • 広すぎる土地は分筆したほうが売りやすい
  • 権利関係のトラブルを回避できる
  • 不整形地を整えることで売却価格を底上げできる

広すぎる土地は分筆することで買い主を探しやすくなる

広すぎる土地を使いやすいサイズに分筆すると、買い主探しが楽になります。

不動産売却のメインターゲットは、「持ち家がほしい」と考えている一般人です。企業や投資家等でもない限り、広い土地は家を建てても持て余してしまいますし、価格も高いのでなかなか売れません。

そこで役に立つのが、分筆です。

1平方メートルあたりの地価が15万円の地域に、1,300平方メートルの土地を持っていたとしましょう。

本来なら、この土地の売却価格は15万円×1,300平方メートル=1億9,500万円です。到底、「一戸建てを建てたい」という人が購入できる不動産ではありません。

しかし、この土地を10筆に分筆すれば、130平方メートルの土地を1,950万円で売り出せます。

このように、元々の状態だと売りづらい土地を売りやすい状態にできるのが、分筆の大きなメリットです。

権利関係が複雑な土地も分筆すればスムーズに売却できる

土地の分筆後に不動産売却をすれば、土地の所有権に関するトラブルをある程度回避できます。

たとえば、自分と弟の2人でひとつの土地を半分ずつ相続した場合、土地の持分はお互い50%ずつです。この状態で、相続した自身の持分である50%を第三者に売却すると、不動産を弟と第三者が半分ずつ所有することになります。

持分の管理や固定資産税の負担割合、税の支払い方法など、共有状態の土地について話し合う内容は複数ある以上、「お互いが自分の持分だけ管理しておけばよい」というわけにはいきません。

不動産売却によって土地の所有者が変わると、もともと自身と弟が交わしていた管理の割合やルールについても考え直す必要が出てくるため、感情的な反発を招いてしまう可能性があります。

一回目の売却ならともかく、二度三度と売却が起きて所有者が変わったり、相続が発生したりすれば、土地の管理も大変です。

分割だとトラブルになるリスクのある土地も、最初から分筆で別の土地として相続・売却しておけば、リスクを抑えつつ売却できます。

不整形地を分筆してきれいに形に整えることができる

不動産市場では、原則として使いやすい土地や利便性の高い土地に人気が集まりやすいです。

旗竿地や狭小地、変形地など、形が変わっていて活用しづらいスペースが出てしまう土地は、人気がないので高く売れません。

しかし、不整形地でも、使いづらい部分をカットして形を整えてしまえば、市場価格で売却できるようになります。

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不動産売却前に土地を分筆する際の注意点は面積の下限があることなど

一定の面積

不動産売却前に土地を分筆する際の注意点は、以下のとおりです。

  • 分筆後の土地は一定以下の面積を確保する必要がある
  • 正確な境界線確定図の取得が必須
  • 分筆後の土地を売ると反復継続にあたる可能性がある
  • 土地の切り方によっては資産価値が下がる

分筆できる土地の広さに制限がある

実務上、分筆後の土地面積が「0.01平方メートル未満」になる場合、登記ができないとされています。

法律で明確に規定されているわけではありませんが、あまりにも狭すぎる土地の分筆を認めると、個別の住所地として納税額を計算したり、郵便物を届けたりすることもできないからです。

また、土地は、地域によって「最低敷地面積」が定められています。

たとえば、最低敷地面積が100平方メートルになっているエリアでは、分筆後の土地の広さが100平方メートルを下回ると、新しく建物を建てることができません。

「土地を分筆して一方は自分たちの家を建て、もう一方の土地は宅地として売却する」といった対応が取れなくなる場合もあるので、分筆をするなら地域のルールを確認する必要があります。

正確な境界線確定図が必要不可欠

土地を分筆するためには、正確な境界線確定図(確定測量図)が必要です。

「古くから持っている土地で、厳密に土地の境界線がどこか分からない」「土地の境界を証明できる書類がない」といった場合、先に境界線を確定させる必要があります。

田舎の土地や代々受け継いでいる土地だと、手に入れた時点で境界線を厳しく決めていないケースも少なくありません。

境界線の調査は、素人だと対応できないので、測量士や土地家屋調査士に頼んで土地の境界を調べてもらう必要があります。

分筆後の土地を売ると反復継続にあたる可能性がある

反復継続とは、「複数の不動産を継続して売却する」行為のことです。

宅建業法では、反復継続にあたる手続きをする場合、不動産業の免許を取る必要があるとしています。

不動産業の免許を持たない人が継続的に複数の不動産を売ると、場合によっては法律違反で罰せられてしまうため、注意が必要です。

参考:不動産売却で違法な反復継続とは?知らないとまずい基礎知識

土地の切り方によっては資産価値が下がる

土地の切り分け方によっては、総合的な面積が同じでも、資産価値が下がってしまう場合があります。

たとえば、道路に対して奥行きの長い土地を道路側と奥側で分割した場合、奥側は道路と接しません。

日本では、土地に建物を建てる条件として、幅4メートル以上の道路に最低2メートル以上接することを義務付けています。

接道義務を守れない奥側の土地は、家を建てられないので売却価格が下がってしまうのです。

土地の切り方次第で、用途が制限されたり価値が落ちたりするので、土地を分筆する場合は「どう切るか」を慎重に決めましょう。

売りづらい土地は分筆してより良い条件で手放そう:まとめ

広くて持て余している土地や、ある程度広さはあるものの形が悪くて人気のない土地は、分筆することで早期売却や高額売却を狙えるようになります。

ただし、土地の分筆は、1ヶ月前後の時間と最低30万円以上のお金がかかる手続きです。土地の切り方によって資産価値が落ちることもあるため、どんな状況でもおすすめできる方法ではありません。

「分筆したほうがよいのか」「分筆するメリットは何か」を不動産売却の素人だけで判断するのは難しいので、プロである不動産会社にアドバイスを受けてから分筆すべきかどうかを考えましょう。

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