個人がマイホームを売却すると、一定の要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円まで控除が適用され、課税金額を減らしたりゼロにしたりすることが可能です。
この特例は「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」と言い、「3,000万円特別控除」と呼ばれています。
また、個人が住宅ローンを利用して、マイホームを新築したり、購入したりしたときに一定の要件を満たしていると、毎年の所得税から控除を受けることができます。これが住宅ローン控除です。
住み替えの際、売却時に3,000万円特別控除を受け、購入時に住宅ローン控除を受けることができれば、かなりの節税になりますが、併用はできません。
そこで、今回はマイホームの住み替え時にどちらの制度を使うのがお得なのか、具体的な例を出しながらご説明します。
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目次
3,000万円特別控除とは?
3,000万円特別控除とは、マイホームを売却したときに譲渡所得から3,000万円が課税対象外にできる特例制度です。
譲渡所得は、不動産売却金額-(取得費+譲渡費用)で計算されます。
3,000万円特別控除の例①
Aさんは10年前に3,000万円で購入したマイホームを4,000万円で売却しました。
譲渡費用(仲介手数料や測量費等)は150万かかりました。
譲渡所得=4,000万円-(3,000万円+150万円)=850万円
3,000万円特別控除の特例で譲渡所得はゼロとなり、納税金額は0円となります。
3,000万円特別控除の例②
Bさんは20年前に1,500万円で購入したマイホームを5,000万円で売却しました。
譲渡費用は200万円かかりました。
譲渡所得=5,000万円-(1,500万円+200万円)=3,300万円
3,000万円特別控除の特例で課税対象額は300万円となります。
参考:5分でわかる!3,000万円特別控除とは?【マイホーム売却編】
3,000万円特別控除後の税率について
3,000万円特別控除の特例は、マイホームの所有期間により税率が異なります。
区分 | 所得税 | 住民税 |
長期譲渡所得 | 15% | 5% |
短期譲渡所得 | 30% | 9% |
この税率に2037年まで復興特別所得税が上乗せされ、短期譲渡所得の所得税率は30.63%、長期譲渡所得の所得税率は15.315%となります。
税率は売った年の1月1日現在で5年を超えるかどうかにより、適用する税率が異なります。
売却したマイホームの所有期間が10年を超えている場合は、3,000万円特別控除の特例を適用した後の課税長期譲渡所得金額に対して、以下のとおり軽減された税率で計算します。
課税長期譲渡所得金額 | 所得税 | 住民税 |
6,000万円までの部分 | 10% | 4% |
6,000万円を超える部分 | 15% | 5% |
この税率に2037年まで復興特別所得税が上乗せされ、所得税率は10.21%となります。
Bさんは20年マイホームを所有していたので長期譲渡所得に該当し、さらに軽減税率の特例が適用されます。
税額は 300万円×14.21%=426,300円となります。
ちなみに、3,000万円特別控除の特例を受けない場合
Aさんの税額は 850万円×20.315%=172万6,775円
Bさんの税額は 3,300万円×20.315%=670万3,950円
となり、かなり高額になります。
参考:不動産売却は短期譲渡・長期譲渡のどちらがお得?3つのポイントで徹底比較
住宅ローン控除とは?
住宅ローン控除とは、正式名は「住宅借入金等特別控除」といいます。
個人が住宅ローン等を利用して、マイホームを新築・取得・増改築をした場合、毎年末の住宅ローン残高の0.7%を最大13年間、所得税から控除することができる制度です。所得税から控除しきれない場合には、翌年度の住民税から控除されます。
住宅ローン控除の制度は、税制改正や住宅の種類により適用条件が変わることがありますが、基本的な適用条件は以下の通りです。
- 住宅ローンの返済期間が10年以上であること
- 住宅ローン控除を受ける本人が居住していること
- 延床面積が50㎡以上であること
- 住宅引き渡し後から6ヶ月以内に入居し、その後も住み続けていること
- 居住用の床面積が全体の二分の一以上であること
- 住宅ローン控除を受ける本人のその年の合計所得が2,000万円以下であること
合計所得とは?
給与所得・不動産所得・譲渡所得・雑所得などの合計金額のことを指します。
先述のBさんを例に計算してみましょう。
- 20年間住んでいたマイホームを売却し、3,300万円の売却益を得る
- 新たに4,000万円の住宅ローンを借り入れし7,300万円の新築住宅を購入
- 年末の借入残高は約3,900万円
住宅ローンの金利や年数にもよりますが、初年度の節税金額は
3,900万円×0.7%=273,000円
となります。
単純計算すると13年間で
273,000円×13年=354万9,000円
となり、住宅ローン控除で節税できる金額は約355万円となります。
3,000万円特別控除と住宅ローン控除はどちらがお得?
先述したとおり、「マイホームを売却して3,000万円特別控除を適用し、新居を購入し住宅ローン控除を適用する」といった併用はできません。
どちらかの制度一つを選択する必要があります。
Bさんの例を使い、3,000万円特別控除を適用する場合と、住宅ローン控除を適用する場合とで、どちらが節税になるのかを見ていきましょう。
3,000万円特別控除を適用し、住宅ローン減税を適用しない場合、Bさんの譲渡所得は300万円になるので
税額は300万円×14.21%=426,300円
本来は3,300万円×20.315%=670万3,950円を納税するところですが、
670万3,950円―426,300円=627万7,650円
約628万円の節税となります。
3,000万円特別控除を適用せず、住宅ローン控除を適用した場合、Bさんの譲渡所得は3,300万円となり
税額は3,300万円×20.315%=670万3,950円
住宅ローン控除で節税できる金額は約355万円なので
670万3,950円-354万9,000円=315万4,950円
約315万円の節税となります。
Bさんの場合は、3,000万円特別控除の特例を適用した方が節税になることがわかります。
ちなみに、Aさんの条件で同じように4,000万円の住宅ローンを組み、年末の借入残高が3,900万円の場合
3,000万円特別控除を適用すると、譲渡益が850万円なので本来の税額
850万円×20.315%=172万6,775円
が0円となり、約173万円の節税となります。
一方、住宅ローン減税を適用すると、13年間で約355万円の節税ができるので、3,000万円特別控除で節税出来る金額約173万円より、住宅ローン減税で節税できる金額の方が多いことがわかります。
Aさんの場合は、住宅ローン減税を適用する方がお得です。
条件により有利・不利は変わる
Bさんのように、長い年月住んでいてその地域の土地価格が上昇し、取得価格よりも大幅な価格アップで売却でき、高額の譲渡益が発生するケースもありますが、このようなケースはそれほどあるわけではなく、むしろAさんのように譲渡益がそれほどでもないケースの方が多いでしょう。
譲渡益があってもその金額が少ない時は、Aさんのように3,000万円特別控除は適用せず、譲渡税を支払い、住宅ローン控除を適用した方がお得になるケースも多いです。
住宅ローン控除を適用する際の注意点は、住宅ローンの繰り上げ返済です。
住宅ローン控除は最大13年間適用されますが、繰り上げ返済をして返済期間が13年より短くなると、それ以降は適用外となってしまいます。
繰り上げ返済を検討している場合は、そのことも頭に入れておきましょう。
尚、マイホーム購入時に住宅ローン控除を適用した後、3,000万円特別控除に変更することは可能ですが、逆に3,000万円特別控除を適用後に住宅ローン控除に変更することは不可能です。
その点にも注意が必要です。
また、Bさんのように20年と長期間マイホームを所有後に売却する場合は良いのですが、短期譲渡所得に該当する5年以下でのマイホームの売却は、税率がとても高額になります。
新たに購入したマイホームで住宅ローン控除を適用するよりも、売却するマイホームで3,000万円特別控除を適用した方がお得になると考えられます。
3,000万円特別控除を適用することで、譲渡所得の金額が少なくなり、譲渡益にかかる所得税・住民税の金額が減るためです。
所有期間が5年以下のマイホームを住み替える場合は、どちらを適用するのが節税になるのか、しっかりシミュレーションすることが重要です。
住み替えで3,000万円特別控除と住宅ローン控除どちらを選ぶかは慎重に:まとめ
3,000万円特別控除と住宅ローン控除は、それぞれ適用を受けるための条件があり慎重に選ばなければなりません。
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