「あの時、欲を出さなければ……。いや、あの営業マンの言葉を信じなければ……」
都内のIT企業に勤めるAさん(53歳)は、今も後悔の念に駆られています。実家近くへの転勤、子どもの自立を機に彼が売却しようとしたのは、郊外にある築19年の一戸建て。
近隣の成約事例から見ても、3,000万円で売れるのは確実と言われていた物件でした。
しかし、最終的な成約価格は、わずか2,500万円。
わずか3ヶ月の間に、500万円という大金が、煙のように消えてしまったのです。Aさんは一体、どこで間違えたのでしょうか?
甘い罠:「他社より高い査定額」に目がくらむ
売却活動を始めたAさんは、3社の一括査定を利用しました。A社・B社は「2,900万円〜3,100万円」という現実的な数字を提示。
しかし、最後に現れたC社だけが、驚きの数字を叩き出したのです。
「弊社なら、3,600万円でいけますよ」
「そんなに高く売れるのか!」と舞い上がったAさん。これこそが、全ての悲劇の始まりでした。
C社が提示したのは、根拠のある価格ではなく、単に「媒介契約を取るための撒き餌」に過ぎなかったのです。
参考:不動産会社の「高すぎる査定額」に騙されるな!「釣り査定」の見抜き方
恐怖の「干し物件」への転落と、情報の遮断
C社と専任媒介契約を結んだAさん。しかし、期待とは裏腹に、案内(内見)はほとんど入りません。たまに来る報告は「近隣に競合物件が出ました」「今は時期が悪いですね」という言い訳ばかり。
実はこの時、C社は他社からの問い合わせを「商談中です」と嘘をついて断る「囲い込み」を行っていました。相場より高い価格で市場に出し続け、買い手がつかない状態を作り出す。いわゆる、物件が干された状態でした。
【ここが闇】なぜわざと売らないのか?
自社で見つけた客にだけ売りたい(両手仲介)ため、他社が連れてきた優良な買い手をわざと排除するのです。売主の利益よりも、自社の手数料を優先する悪質な手口です。
「たった一つのミス」:売り急ぎを悟られた瞬間
売却開始から2ヶ月が過ぎた頃、転勤先への引っ越し期限が迫り、Aさんは焦り始めました。
C社の担当者に「とにかく早く売りたいです」と漏らしてしまったこと。これこそが、致命的なミスでした。
「売り急いでいる」という情報は、悪徳業者にとっては絶好のチャンスです。担当者は豹変しました。
「今の価格では売れそうにありません。でも、2,500万円ならすぐにキャッシュで買い取ると言っている業者がいます。すぐに決めないと、この話もなくなりますよ」
冷静な判断力を失っていたAさんは、その日のうちに契約書に印鑑を押してしまいました。3,000万円で売れるはずだった資産は、C社の巧妙なシナリオによって、叩き売られる結果となったのです。
結論:500万円を捨てないための「防衛術」
不動産売却は、一度ボタンを掛け違えると取り返しがつきません。Aさんのような後悔をしないために、売主ができる自衛策は3つだけです。
- ✅ 「高すぎる査定額」の根拠を徹底的に疑う
- ✅ 「囲い込み」の気配があれば即、契約を解除する
- ✅ 安易に自分の「売り期限(弱み)」を明かさない
まずは、市場の「適正な相場」を複数の目で見極めること。それが、あなたの大切な資産を守る唯一の道です。
あなたの物件は「本当はいくら」で売れるのか?





















