「不動産売却の際に聞く取得費ってなに?」
「取得費によってかかる税金が変わるって本当?」
こんな疑問にお答えします。
所有している土地や建物・マンションなどの不動産を売却すると、その売却益に税が課されます。売却益(譲渡所得)とは、不動産を売却したときに得られる利益分のことです。
確定申告の時に、売却益の金額により算出された譲渡所得税を納税することになりますが、その売却益の計算は以下の方法ですることができます。
簡単に言うと、取得費とは当該不動産を購入するときにかかった費用、譲渡費用とは当該不動産を売却するときにかかった費用のことです。不動産売却価格から、この取得費と譲渡費用を差し引いた金額が譲渡所得となります。
今回は、不動産売却時に必要な取得費の内容と計算方法について詳しく説明します。
\厳選2,300社と提携・国内最大級!/
不動産の取得費の対象となるものとは?
不動産の取得費の対象となるものは以下の通りです。
- 土地・建物の購入代金
- 建築費
- 仲介手数料
- 設備費
- 改良費(リフォーム費・増改築費等)
- 測量費・解体費・整地費
- 購入時に納めた税金(不動産取得税・印紙税・登録免許税等)
- 住宅ローン等の借入金の利息
リフォーム費用や増改築費用は取得費になり得ますが、不動産の価値を上げる場合のみが対象となります。
具体的には、地震に備えるための耐震工事、浴室や玄関などをバリアフリーするためにかかった費用、断熱性を高めるために複層ガラスに交換した費用などは取得費の対象となります。
一方、故障した住宅設備の修理や、外壁の修繕などの建物の維持管理にかかった費用は取得費の対象とはなりません。
また、取得費は土地と建物でも計算方法があります。購入した金額そのままが取得費になるわけではないので注意が必要です。
次で詳しく説明します。
土地と建物の取得費の計算方法
土地は年数が経っても劣化はしないので、購入にかかった金額が取得費となります。一方、建物は年数の経過により劣化して価値が下がるとみなされます。
この考え方は減価償却といい、固定資産税の建物の評価額が毎年下がるのもそのためです。
建物の取得費は、取得した時に支払った購入価格から後述する計算式で求めた減価償却費を差し引いた金額となります。
①耐用年数と償却率
この減価償却費は、建物が店舗や事務所などの事業用であるか、耐用年数や、構造が木造か鉄筋コンクリート造であるか、などによって償却率や計算式が異なります。
耐用年数とは、建物の価値がなくなるまでの年数のことで、事業用・非事業用、木造・鉄筋コンクリート造等の違いでそれぞれ設定されています。
償却率とは、年数経過により建物の価値が下がっていく割合のことを言います。非事業用の耐用年数と償却率は以下の表のとおりです。
建物の構造 | 耐用年数 | 償却率 |
鉄骨鉄筋コンクリート造またはコンクリート造 | 70年 | 0.015 |
れんが造、石造またはブロック造 | 57年 | 0.018 |
金属造(骨格材の肉厚4ミリ超) | 51年 | 0.02 |
金属造(骨格材の肉厚3ミリ超4ミリ以下) | 40年 | 0.025 |
金属造(骨格材の肉厚3ミリ以下) | 28年 | 0.036 |
木造または合成樹脂造 | 33年 | 0.031 |
木骨モルタル造 | 30年 | 0.034 |
②減価償却費の計算式
減価償却費は以下の計算式で求めることができます。
減価償却費=建物の購入代金×0.9×償却率×経過年数
経過年数は建物の築年数とは異なります。建物を購入してから売却するまでの保有した年数のことなので間違えないように注意しましょう。
なお、保有年数の数ヶ月は、6ヵ月以上は切り上げ、6ヶ月未満は切り捨てとなります。
例を挙げると、購入してから売却までの期間が
9年8ヵ月・・・10年(切り上げ)
10年3ヵ月・・・10年(切り捨て)
となります。
③建物の取得費の計算式
建物の取得費は以下の計算式で求めます。
建物の取得費=建物の購入代金ー減価償却費
④取得費のシミュレーション
実際に計算してみましょう。
②の式に当てはめると、
減価償却費=2,500万円(購入価格)×0.9×0.031(償却率)×20年(経過年数)= 1,395万円
例に挙げた建物の減価償却費は、1,395万円となります。
次に建物の取得費を算出してみましょう。
③の式に当てはめると、
建物の取得費=2,500万円(購入価格)- 1,395万円(減価償却費)= 1,105万円
建物の取得費は1,105万円となります。
土地は購入代金がそのまま取得費となるので、土地を1,500万円で購入したのであれば、土地・建物の取得費は2,605万円と算出できます。
土地と建物を一括購入した場合の取得費は?
マンションや建売の一戸建てのように、土地と建物の価格が一緒になった状態で購入した場合は、土地と建物のそれぞれの金額がわからないこともあります。
その場合は、土地と建物の金額を割り出す必要があります。いくつか方法がありますのでみていきましょう。
消費税額から建物価格を計算する
家を購入する際の売買契約書に記載されている消費税額から、建物代金を計算することができます。土地には消費税はかかりませんが、建物には消費税がかかります。
計算には購入した年の消費税率を使います。各年の消費税率は以下の表を参考にしてください。
購入年 | 消費税率 |
平成元年(1989年)4月1日~平成9年(1997年)3月31日 | 3% |
平成9年(1997年)4月1日~平成26年(2014年)3月31日 | 5% |
平成26年(2014年)4月1日~令和元年(2019年)9月30日 | 8% |
令和元年(2019年)10月1日~ | 10% |
実際に例を挙げて計算してみましょう。
建物価格:120万円÷5%(0.05)= 2,400万円
土地価格:住宅価格4,120万円-建物価格2,400万円-消費税120万円=1,600万円
建物の取得費は
減価償却費=2,400万円(購入価格)×0.9×0.031(償却率)×10年(経過年数)=669万6,000円
2,400万円(購入価格)-669万6,000円(減価償却費)= 1,730万4,000円
土地は購入した時点での価格そのままなので、1,600万円
建売の一戸建ての取得費は
1,600万円+1,730万4,000円 = 3,330万4,000円
と算出できました。
建物の標準的な建築価額表から計算する
売買契約書に消費税が記載されていない場合、建物価格を国税庁が公表している「建物の標準的な建築価額表」から算出する方法もあります。
この価額表を使い、建築年の1㎡当たりの標準単価に建物の延床面積を掛けて計算します。
先程の<例>を基に計算してみましょう。
建物価格 = 建築年の標準的な建築価額単価 × 建物の延床面積
= 159,900円 × 120㎡ = 1,918万8,000円
となります。
固定資産税評価額の土地と建物の比率から計算する
固定資産税評価額の土地と建物それぞれの金額の割合から按分して、土地と建物の購入金額を算出することができます。
例えば、土地の固定資産税評価額が1500万円、建物の固定資産税評価額が1,000万円の場合、比率は土地:建物=3:2となります。
購入代金が4,000万円だったとすると、3:2の比率で計算して、
土地の購入価格 2,400万円
建物の購入価格 1,600万円
となります。
参考:不動産売却時の土地と建物の按分方法を4つのポイントで解説
売買契約書や領収証などがなく購入価格がわからない場合は?
相続した不動産であったり、購入した年がかなり前で、売買契約書等の購入金額がわかるものがどうしても見つからないという場合もあります。
そういった場合は、譲渡価格の5%を取得費とするよう、国税庁が定めています。
例えば、譲渡価格が3,000万円だとすると、概算取得費は150万円となります。
ただし、この概算取得費の計算方法だと、購入価格から計算する取得費よりかなり安くなってしまうケースがほとんどで、譲渡所得が高額になってしまいます。
それゆえ、高額な課税をされてしまう可能性が高いです。そこで、探してみてほしいものが、以下のような購入価格を証明できるものです。
住宅ローンの金銭消費貸借契約書やローンの返済明細表等
住宅ローンを利用した場合だと、金銭消費貸借契約書に住宅ローンで借入予定の金額が記載されています。この金銭消費貸借契約書にあるローン総額から購入価格を推定します。
また、住宅ローンの返済明細表や住宅ローンの償還表など、これらのものからローン総額を割り出し、購入金額を推定することもできます。
住宅ローン返済口座の通帳等
住宅ローンの毎月の返済金額が記載されている通帳から、住宅ローンの借入金額と購入価格を推定することができます。
物件購入の際に銀行振込をした通帳
不動産を購入する際は、通常銀行振込を利用します。
売主に代金を支払った時に、口座より購入金額が振り替えられたという記録が残ります。その金額が記載されている通帳で購入価格を証明することができます。
購入時のちらしやパンフレット
もし、購入した当時の金額が記載されているちらしやパンフレットがあれば、購入価格を証明することができます。
登記簿謄本
登記簿謄本には住宅ローンの金額が記載されている欄があります。「債権金額」と記載されている金額がそれです。
住宅ローンの借入金額から購入価格を推定することができます。
まとめ
今回は取得費についてご説明しました。
大切な財産である不動産を売却するのですから、少しでも節税して、手元に多くお金を残したいと思うのは当然です。
ただ、相続した不動産、古すぎていくらで購入したか分からない、購入価格を証明するものを紛失してしまった等、お困り事もあるでしょう。
その場合は、不動産売却のプロである不動産会社に相談してみるのもお勧めです。
信頼できる不動産会社選びです!
このサイトから多数の査定依頼を受けています。(NHK・経済誌の取材実績も)