「不動産を売却するとき、土地と建物それぞれの価格の按分方法が知りたい」
「土地と建物の按分が税金や手残りに影響するって本当?」
こんな要望にお応えします。
不動産を売却する際の土地と建物の按分とは、ひとつの不動産を土地と建物に分けて、それぞれの価格(内訳)を算出することです。
一般的に、チラシやインターネット広告などの不動産価格は「土地と建物の合計価格」で提示されているため、内訳が別々に表示されていることはほとんどありません。
しかし、この按分比率は、売却後の税金の計算や売買契約書の作成において非常に重要な役割を果たします。
按分方法には、固定資産税評価額の比率を使う方法などいくつか種類があり、状況に応じて適切な方法を選択することが大切です。また、建物部分には消費税が関係するため、按分結果は最終的な手残り金額にも影響を与えます。
今回は、不動産売却を控えた売主様が知っておくべき、土地と建物の「按分」の基本と損をしないための注意点をプロの視点から詳しく解説していきます。

※按分の計算や、売却の手続きで損をしたくない方へ
土地と建物の按分比率は、売買契約書に一度記載してしまうと後から変更ができません。つまり、売主様に最も有利(税負担が軽くなる)な按分を熟知し、買主側とスマートに交渉してくれる「実務能力の高い不動産会社」を最初の段階で選んでおくことが、売却成功の絶対条件になります。
目次
不動産売買取引の実務上の慣習
土地・建物(マンションも含む)の不動産売買では、売り出し時には総額(売買代金)のみが提示されるのが一般的です。
しかし、実際の売買契約書を作成する段階や、売却後の税金計算の段階では、総額をなんらかの合理的な基準で「土地」と「建物」に按分し、それぞれの価額を確定させなければなりません。
特に買い手側にとっては、建物には「減価償却(建物の価値の減少分を経費にする制度)」があるため、建物の購入価額がいくらになるかは極めて重要です。また、売主側にとっても、マイホーム売却時の「譲渡所得(売却益にかかる税金)」を正しく計算するために、建物の正確な価格を把握しておく必要があります。
なぜ不動産売却で土地建物の按分が必要なのか?
不動産売却時に土地建物の按分が必要となる理由は、主に以下の3点です。
- 消費税の問題
- 減価償却費の問題(買い手側の影響)
- 不動産売却金額(譲渡所得税)の問題
順に解説します。
①消費税の問題
不動産売却における按分とは、総額から土地と建物それぞれの価格を決める作業のことです。
なぜこれが重要かというと、最大の理由は「消費税」にあります。
実は日本の税制において、消費税が課されるのは「建物」だけで、「土地」には消費税がかかりません。建物は年月が経つと劣化(消費)するものですが、土地は消費されないという考え方があるためです。
売主が業者である場合や投資用物件の売却では、建物価格にかかる消費税の納税義務が発生するため、正確な按分が不可欠となります。個人マイホームの売却は基本非課税ですが、買い手が業者の場合は按分比率を巡ってネゴシエーションが発生するため、売主としても仕組みを知っておく必要があります。
②減価償却費の問題
売買契約書に内訳が書かれていない場合、購入した買主側は土地と建物の正確な金額を確定させなければなりません。
買主は、購入した建物を資産として毎年「減価償却」していきます。減価償却とは、建物の経年劣化に合わせて価値を減らし、その分を経費として計上していく手続きです。
この減価償却は「建物」にのみ認められており、「土地」には行いません。そのため、購入側(特に法人や投資家)はできるだけ建物の金額を多くして経費を増やしたいというインセンティブが働きます。ここで建物の金額が不適正だと、税務署から否認されるリスクがあるため、お互いに納得のいく合理的な按分が求められます。
③不動産売却金額の問題
按分比率があまりにも不自然だったり、親しい友人や親族間などで時価よりも極端に低い金額で建物を譲渡したと判断されたりすると、「みなし譲渡」とみなされ、思わぬ譲渡所得税や贈与税が発生するリスクがあります。
参考:不動産売却で贈与税がかかるってホント?5つのケースで徹底解説
不動産売却時の土地と建物の按分方法
実務で使われる土地と建物の按分方法は、主に以下の4つです。
- 建物(または土地)の時価を優先的に計算する方法
- それぞれの時価により按分する方法
- 固定資産税評価額の比率により按分する方法
- 不動産鑑定士による鑑定評価額を採用する方法
①建物(または土地)の時価を優先的に計算する方法
先に建物、あるいは土地のどちらかの時価を算出し、全体の売買価格からその金額を差し引いてもう一方の価格を決める方法です。計算はシンプルですが、優先させた時価が実際の市場価格と大きくズレている場合は、税務署に否認されるリスクがあります。
②それぞれの時価により按分する方法
土地と建物のそれぞれの時価を算出し、その割合(比率)に応じて売却金額を分ける方法です。時価の根拠がしっかりしていれば、比較的妥当性の高い方法と言えます。
③固定資産税評価額の比率により按分する方法
毎年送られてくる「固定資産税の課税明細書」に記載されている、土地と建物の評価額の比率をそのまま売買価格に当てはめる方法です。
国が定めた公的な数値を根拠にするため税務署からの信頼度が最も高く、実務上の不動産取引において最も一般的に採用されている方法です。ただし、築年数が古い物件などでは実際の価値と乖離することもあります。
④不動産鑑定士による鑑定評価額を採用する方法
不動産鑑定士に依頼して、土地・建物の適正な評価額を出してもらう、最も合理的で確実な方法です。ただし、鑑定費用として数十万円のコストがかかるため、一般的なマイホーム売却ではあまり現実的ではありません。コストを抑えるために「簡易鑑定」を利用するケースもあります。
土地と建物の按分:計算例
ここでは、実務で最もよく使われる「固定資産税評価額の比率により按分する方法(前項の③)」の計算例を紹介します。
- 不動産売却価格:4,680万円(税込)
- 消費税率:10%
- 土地の固定資産税評価額:1,800万円
- 建物の固定資産税評価額:1,200万円
建物割合の計算
土地・建物のそれぞれの固定資産税評価額から、建物が占める割合を算出します。
建物の評価額 ÷(土地+建物の評価額合計)= 建物割合
1,200万円 ÷ 3,000万円 = 40%(建物割合)
全体の100%から建物の40%を引くため、土地の割合は60%となります。
消費税を含めた計算
消費税は建物にのみかかるため、建物割合(40%)に消費税率を掛け合わせて、全体の売買代金(税込)の中から、正確な本体価格と消費税額を割り出します。
※実際の取引では、こうした複雑な税金計算や按分比率の調整は、仲介に入る不動産会社がすべてシミュレーションを行ってくれます。
以下のサイトで簡単にシミュレーションできます。
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土地と建物の按分:注意点
按分において最も大切な注意点は、「売主・買主の双方が納得し、かつ税務署に対しても客観的な説明ができる合理的な方法を選ぶこと」です。
一般的に、売主は(条件によっては)消費税や売却益の税金を抑えるために建物割合を低くしたいと考え、逆に買主(業者や投資家)は減価償却費を多く取るために建物割合を高くしたいと主張することがあります。
ここであまりにも極端な按分をしてしまうと、契約直前でトラブルになったり、最悪の場合は後から税務署の調査でペナルティを受けたりするリスクがあります。当事者間の話し合いだけで適当に決めるのではなく、プロの知見を入れて客観的な根拠をもとに決定しましょう。
まとめ:契約書に印鑑を押す前に、まずは「リアルな市場価値」の把握から
ここまで様々な按分の計算方法を解説してきましたが、売主様自身が細かい数字に頭を悩ませる必要はありません。なぜなら、按分比率は最終的に「売買契約書にどう書くか(買主との合意)」で決まるからです。
売却で一円でも多くの手残りを残すために本当に必要なのは、計算式を覚えることではなく、「売主様の税負担が一番軽くなる按分比率をロジカルに計算し、契約時に主導権を握ってくれる優秀な営業マン」を味方につけることです。
そのためには、1社だけの言いなりにならず、必ず不動産一括査定サイトを利用して、複数の会社に「税金対策や按分の相談にも乗ってくれるか」を比較してください。査定額の高さだけでなく、こうした税務の知識や交渉力を持った「本物のプロ」に出会うことこそが、売却成功の最大の近道です。
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