不動産売却で贈与税がかかるってホント?5つのケースで解説します!

不動産売却にかかる贈与税

「不動産売却で贈与税がかかるケースはあるの?」
「贈与税を節税しつつ不動産売却をする方法は?」

 

こんな疑問にお答えします。

不動産売却において、贈与税が課せられるケースと課せられないケースの違いは、「客観的に見て適正な価格で不動産売却を行っているかどうか」です。

不動産売却の手続きでは、取引の内容によって譲渡所得税を納めるのか贈与税を納めるのかが変わってきます。

贈与税は譲渡所得税より税率も高く、課税されるのも買主側なので、適切な知識がないまま取引をすると売主も買主も損をしてしまう可能性があります。

今回は、贈与税について知っておくべき基礎知識を始め、不動産売却において贈与税が課せられるケースとそうでないケースの違い、贈与税を節税しつつ不動産を手放すためのポイントを解説いたします。

記事の信頼性
監修者:毎日リビング株式会社 代表取締役・宅地建物取引士 上野 健太
不動産業者としての実務経験を活かし、売主の立場で記事を監修しています。
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親族に家や土地を渡したい場合は贈与税がかからないように注意しよう

子どもや親族に不動産を売却する場合に注意したいのが、「贈与税」ではなく「譲渡所得税」の発生する取引をすることです。

贈与税は資産を第三者に渡したときにかかる税金

国税庁の定義によると、贈与税は「他人から財産をもらったときにかかる税金」のこと。

ここでいう財産とは、「金銭的価値のあるもの全般」を指します。現金はもちろん、資産価値の高い不動産も贈与税の対象です。

「親が子どもへお小遣いをあげる」「扶養している親族の生活費を負担する」など、生活していくために必要な財産のやり取りに関しては課税されません。

しかし、お小遣いや生活費を越える額の金銭的価値があるものを無料、またはタダ同然の少額でだれかに渡した場合、「財産をもらった側」に贈与税が課せられるのです。

参考:贈与税がかかる場合(国税庁サイト)

贈与税は譲渡所得税よりも税の負担が大きい

通常の不動産売却取引では、不動産の購入時にかかった経費を売却価格から差し引き、残った利益に対して「譲渡所得税」という所得税が発生します。

ただ、不動産売却という名目でも、実質的に贈与とみなされる取引をした場合、譲渡所得税ではなく贈与税が課税されるので注意が必要です。

どうして両者の違いが重要なのかというと、譲渡所得税と贈与税では税率が違うから。

譲渡所得税の税率は、以下の通りです。

  • 長期譲渡所得:所得税15%・住民税5%の計20%
  • 短期譲渡所得:所得税30%・住民税9%の計39%

参考:不動産売却は短期譲渡・長期譲渡のどちらがお得?3つのポイントで徹底比較

一方、贈与税の税率は、課税額に応じて最低10%から最高55%まで上がっていく累進課税方式です。

贈与税の課税対象額が600万円を越えると贈与税の税率が40%に、1,000万円を越えると50%になります。不動産は資産価値が高いため、単純に税率を比較すると贈与税のほうが税負担は大きくなってしまいます。

だからこそ、不動産売却を進める場合、どういったシチュエーションで贈与税が課せられるのかを知っておく必要があります。

参考:贈与税の計算と税率(国税庁サイト)

相場より明らかに安く譲るなど!不動産売却時に贈与税が課せられるケース

明らかに安い金額
一般的に、下記のような取引をすると不動産売却手続きを踏んでいても贈与税の納税が必要です。

  1. 相場より明らかに安い金額で不動産を売った
  2. 扶養家族にタダまたはタダ同然で不動産を譲った
  3. お金をもらわずに名義を書き換えた
  4. 現金の代わりに「買主から借りていた借金の免除」を支払いとした
  5. 買主側の事情でみなし贈与が起きている

実際には個別の事例ごとに贈与税の対象かどうかを考える必要があるものの、あえてリスクの高い取引に手を出すメリットはありません。

ここからは、どのようなシチュエーションで贈与税が課せられるのかを押さえておきましょう。

①相場より安い金額で親族に不動産売却をした

不動産売却をしたにも関わらず、贈与税が発生してしまうケースの中でも良くあるのが、「相場を無視した安値での売却」です。

客観的な価格や公正な価格付けをしない取引が増えると、不動産の値崩れや脅迫による一方的な値引き等がまかり通ってしまいます。

本来、「贈与」とはお金をもらわずタダで相手に財産を譲る行為のことです。

少しでもお金を受け取っていれば贈与にはならないのですが、極端な低額取引は実質的に贈与と変わらないので、税の世界では安値での売却も贈与とみなされます。

例えば、「相続財産として家を残すと相続税の負担が大きいので、市場価値3,000万円の不動産を500万円で子どもに売った」というケースは、子どもから500万円を受け取り、2,500万円の資産を贈与したという取引をしていることになるのです。

こうした極端な値引きや低額での取引は、とくに家族間や親族間の取引で起こりやすいとされています。

そのため、不動産売却では、たとえ親しい間柄であっても必ず不動産会社に査定を頼み、適正額で売却したことを証明できるようにしておくことが大切です。

なお、厳密にいうと贈与にはあたらないものの、課税対象になってしまう贈与のことを、専門用語で「みなし贈与」と呼びます。

みなし贈与は、主に親族間取引で指摘されることの多い事例ですが、交友関係のない第三者に安く不動産を売っても贈与とみなされたケースもあるので、不動産売却では適正価格での売却を心がけましょう。

リスクを避けるという意味では、不動産会社を経由しない個人間取引に手を出さないことも重要です。

参考:不動産売却を個人で行うメリット・デメリット【仲介してもらう方が安全】

②扶養の範囲をこえる贈与をした

扶養範囲を超える贈与

たとえお金をもらっていても、もらっていなくても、売主が扶養している相手に生活費とはいえない額の財産を渡した場合、贈与になります。

贈与税の基本ルールは、「年間110万円以上」の贈与を受けたら、贈与税の申告や納税が必要になるというものです。

ただ、杓子定規に年間110万円のルールを守ると、サラリーマン家庭の大黒柱が、専業主婦として自身の扶養に入れている妻に生活費として月10万円を渡したけで、贈与税を課せられるという事態になってしまいます。

そのため、扶養に入っている人に対する贈与は、生活費の範囲内であれば贈与税の対象になりません。

ただし、贈与税の対象にならないのは、あくまでも相手を扶養するのに必要な食費や医療費といった生活費を渡しているケースです。

不動産を始めとした高額な資産の贈与は、一般的に考えて「生活に欠かせない扶養のための贈与」ではいえないので、贈与税を課せられてしまいます。

③金銭の発生なく不動産の名義変更が行われた場合

金銭の取引をせずに、不動産の名義を相手のものに書き換えた場合も、贈与税の対象です。

日本には、「手に入れた不動産を放棄する」という手続きがありません。

そして、不動産の名義は法務局という国の機関で管理されており、名義変更をすると、法務局と税務署の間で情報が共有されます。

名義の書き換えは、不動産売却や相続、または贈与のあとにのみ行われる手続きです。

不動産の名義変更があったにも関わらず、金銭のやり取りがなく、元の所有者が亡くなっていなければ、自動的に不動産が贈与されたという扱いになって増税が課税されます。

登記に関する情報が国の機関で管理されている以上、登記を書き換えて、こっそり譲渡所得税や贈与税から逃れるという手は通じません。

④不動産売却の代金として借金の返済を免除してもらった

「現金で借金を返せないから、代わりに不動産を渡した」といったケースでも、贈与税がかかります。

たとえ不動産売却手続きの形を取っていても、実際に支払いがされていない以上、売買とはいえないからです。

⑤支払いをした買主側でみなし贈与が起きている

やや特殊なケースですが、夫婦や親子など、買主が2人以上いるにも関わらず、買主のどちらか一方が不動産の名義を100%持っている場合、「買主同士で贈与をした」とみなされます。

この場合、不動産の名義人になっている側が、そうでない側から贈与を受けたことになるため、贈与税の納税が必要です。

適正額で不動産を売却すれば贈与税はかからない

どのような相手との取引でも、適正額で不動産を売り、相手から代金を受け取っていれば、贈与税は課せられません。

そもそも、みなし贈与を始めとした取引に対して贈与税が課せられるのは、適切な納税から逃れる人に対するペナルティーです。

たとえ家族や親族相手の取引であっても、相場に近い金額で不動産売却をしていれば、利益に応じた譲渡所得税を納めることになるので、問題にはなりません。

不動産売却の贈与税を低く抑えるポイントは暦年贈与など

分割

不動産売却時の贈与税をできるだけ低く抑えたい場合、以下のような手続きを取りましょう。

  • 非課税で贈与できる基礎控除(110万円)以下の金額を毎年贈与する
  • 相続時精算課税制度を使って2,500万円分を非課税で贈与する
  • 結婚して20年経過したら配偶者の特例を使って夫婦間で不動産を贈与する

不動産売却の代金等を毎年110万円ずつ贈与する

贈与税には基礎控除があり、基礎控除以下の贈与であれば、現金やその他資産を贈与しても贈与税がかかりません。

贈与税の基礎控除は110万円なので、現金を残したい場合は不動産を売却し、その代金を毎年110万円ずつ贈与すると良いでしょう。

あらかじめ合計金額を決めておくと、定期贈与とみなされ贈与税が課せられる場合もあるので注意が必要です。

相続時精算課税制度を使って不動産を贈与する

相続時精算課税制度という仕組みを使うと、2,500万円まで非課税で「生前贈与」をすることができます。

ただし、相続時精算課税制度で贈与または売却した財産は、将来売主が亡くなった際に「相続財産」としてカウントされ、相続税の課税対象になるので注意が必要です。

配偶者の特例を利用する

結婚してから20年経過した夫婦は、通常なら贈与税がかかる金額の資産でも、マイホームやマイホームの購入資金を非課税で贈与することができます。

非常に限定的な特例ですが、高額な不動産でも非課税で贈与できるので、相続税対策として家族への不動産売却を検討している場合は積極的に活用しましょう。

贈与税が課せられるリスクを知って不動産売却を成功させよう:まとめ

相場を無視した極端な値引きをしたり、金銭を受け取らずに名義を書き換えたりすると、不動産売却の形を取っていても贈与税が課せられます。

贈与税は、通常の不動産売却手続きに課せられる譲渡所得税よりも負担が大きいので、贈与税が発生するケースとそうでないケースを理解して、できるだけ贈与税がかからない贈与や不動産売却を進めましょう。

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