不動産売却を個人で行うメリット・デメリット【仲介してもらう方が安全】

不動産個人売買

「不動産売却って自分(個人)でできるの?」
「不動産の個人間売買のメリット、デメリットを知りたい」

 

こんな疑問にお答えします。

通常、不動産の取引は不動産業者を介して行われます。しかしその場合、不動産業者に仲介手数料を支払わなければなりません。

では、不動産業者を介さずに、個人的に不動産取引を行うことはできるのでしょうか。

今回は、不動産売却を個人で行うとどのようなメリット、デメリットがあるのか、また不動産業者が仲介することにどんなメリットがあるのか、について解説します。

記事の信頼性
監修者:毎日リビング株式会社 代表取締役・宅地建物取引士 上野 健太
不動産業者としての実務経験を活かし、売主の立場で記事を監修しています。
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そもそも不動産の個人売買は可能か

不動産業者を間に入れず、個人間で不動産の取引を行うことはできるのでしょうか。
結論、不動産の個人取引は可能です。

法律上において特に制限はないので、売買契約書をきちんと作成すれば、不動産売買を個人で行うことに問題はありません。

不動産取引を個人で行っても法律には違反しない!個人間の売買には免許も必要なし

宅地建物取引業法によると、宅地もしくは建物の売買、賃貸の代理を生業として行う場合、国土交通大臣あるいは都道府県知事の免許が必要である旨が規定されています。

ただこの免許制度は、消費者の利益を保護することを目的としてあくまで不動産業者に対して課せられているため、個人が自分の不動産を取引することを制限する制度ではありません。

そのため、個人で不動産取引を行う上では免許や許可は必要なく、自己責任において自由に売買できます。ただし、営利目的に短期間で何度も売買を行うような取引は、宅地建物取引業法に違反する行為です。

利ざやを稼ぐための転売などではなく、あくまで正当に不動産の個人間取引をするのであれば、法的に問題はありません。

個人で何度も不動産取引を行っている場合は、注意が必要です。下記の記事を参考にしてください。

>>不動産売却で違法な反復継続とは?知らないとまずい基礎知識

不動産業者の仲介を受けない場合は売買契約書を自ら作成する必要あり

重要事項説明書

個人で不動産を売買する場合でも、売買契約書や重要事項説明書など、制度上要求される取引上の書類を作成する必要があります。

通常は不動産業者が作成するのですが、個人取引の場合は個人で作るのが基本です。売買契約書には以下の内容を記載しなければなりません。

  1. 売買物件の場所
  2. 売買代金と手付金の支払いについての取り決め
  3. 所有権の移転と物件の引き渡しについての取り決め
  4. 抵当権の抹消、固定資産税の精算および起算開始日についての取り決め
  5. 契約の解消に関する取り決め
  6. 契約不適合責任(瑕疵担保責任)についての取り決め

さらに重要事項説明書には、以下の内容も必要です。

  1. 物件に関する説明
  2. 土地と道路、インフラ整備、敷地や建物の状態に関する説明(一戸建てや土地の売買をする場合)
  3. 共用部分に関する説明(マンションの場合)
  4. 代金以外にかかる費用の説明
  5. 契約解除に関する説明
  6. 保険の加入に関する説明

これら書類作成に必要な交渉や情報収集を個人で行うことができれば、不動産業者の仲介を受けなくとも土地、建物、マンションなどの取引ができます。

ただ、少しでも不備があれば詰みます。

不動産売却を個人で行うメリット

自分が保有する不動産を売却する場合、不動産業者を介さず個人で取引することにどのようなメリットがあるでしょうか。

以下では、諸費用を安くできること、不動産の販売活動を個人で自由に行えることなどのメリットについて解説します。

不動産業者に支払う仲介手数料や消費税を抑えられる

不動産売却を個人で行うことの最大のメリットは、取引にかかる出費を抑制できるという点です。特に、不動産業者を利用した場合に発生する仲介手数料を支払う必要がないのは、大きな利点といえます。

仲介手数料は不動産業者に仲介をお願いすると必ず発生する費用で、最大で取引価格の3%+60,000円+消費税の支払いが必要です。

たとえば1,000万円の不動産取引を行うと、最大で396,000円(税込)もの手数料がかかります。個人で取引を行う場合、こうした仲介手数料を負担せずに済みます。

さらに、消費税の負担を避けられる点も大きなメリットです。個人間の不動産売買では物件価格自体には消費税は発生しません
仲介手数料だけに消費税がかかるので、仲介手数料が発生しなければ、消費税の負担も回避できます。

参考:不動産売却で仲介手数料っていくらかかるの?失敗しないための基礎知識

不動産の販売活動を個人で自由に行える

不動産の売却を不動産業者に仲介してもらう場合、売却のための営業は業者側が中心となって行います。
しかし、不動産業者は多数の物件を同時並行で扱っているので、特定の個人の不動産のために、特別な販売活動を行うことはあまりありません。

そのため、不動産の保有者の中には、自分の物件に対してきちんと販売活動が行われているのか、心配になるという人もいます。

たとえば、営業の一環として行われるチラシの作成に対して、個人的にはもっと工夫を凝らしたデザインにしてほしいと考えても、不動産業者の側で十分に対応できないという事態が起こり得るわけです。

しかし個人で売買を行う場合、こうしたもどかしさを感じることはありません。自分自身で自由に販売活動を行うことができます。

不動産売却を個人で行うデメリット

自由度が高く、費用を抑えられるというメリットがある反面、個人での不動産売却にはデメリットも多くあります。
特に、購入者とのトラブル、購入者が住宅ローンを組みづらい、作業量が多いなどの難点があります。

不動産の購入者とのトラブルが多く対応が大変

個人での不動産取引だと、売り手と買い手のどちらも素人であるため、さまざまなトラブルが発生する恐れがあります。

典型例としては、価格の交渉がいつまでも決着しない、売買契約書や重要事項説明書の内容をめぐるトラブル、購入後にシロアリが大量発生したなど瑕疵担保責任をめぐるトラブルなどです。

不動産業者はプロですので対処できますが、個人の場合だとすべての問題に対処するのは難しい場合もあります。

参考:不動産売却のトラブル【瑕疵担保(契約不適合責任)編】事例で回避!

購入者が住宅ローンを組みづらい

通常、一戸建てやマンションの取引の場合、買い手側は住宅ローンを組みます。個人による取引の場合、不動産を担保として金融機関から融資を受けるには、個人で登記申請は行えないため司法書士に依頼しなければなりません。

しかしそれでも、宅地建物取引業の免許を持つ不動産業者が仲介に入っていない場合、住宅ローンを組むための金融機関の審査が通らないこともあります

契約書類の作成や販売活動など作業量が多い

先に個人で不動産売却をする場合の手順について説明しましたが、とにかく行う必要のある作業量が多いです。

価格の設定や販売活動、さらに契約書の作成など、不動産業者に任せれば行わなくてもよいことを、個人取引の場合はすべて自分で行う必要があります。

不動産売却を個人で行うための手順

不動産相場

では、実際に個人で不動産の売却を行うときに、どのような手順を踏むことになるのかについて解説します。一般的な個人取引のプロセスは以下の通りです。

  1. 売りたい不動産の価格設定
  2. 買い手を見つけるための販売活動
  3. 購入検討者への質疑応答
  4. 契約に必要な書類の用意
  5. 販売後のトラブル対応

①売りたい不動産の価値を調べて価格を設定する

最初に行う必要があるのは、売ろうとしている不動産の価値を調査し、市場価値に見合った価格を付けるという作業です。

相場よりも極端に安く売ってしまうと贈与とみなされてしまい、購入者に贈与税が発生します。親族などに格安で売りたいと考える人もいるでしょうが、安く売りすぎるとかえって負担が増えるので注意が必要です。

②買い手を見つけるための販売活動を行う

不動産を売却するには、自分が売りたい不動産のことを社会に広く認知してもらう必要があります。そのためには、個人的に広告を打つという行為が必要です。

個人で行える広告活動としては、ネット上の不動産情報検索サイトへの登録、新聞の折り込みやポスティング用のチラシの作成などがあります。費用があまりかさまないよう工夫することも大切です。

ただ、不動産情報サイトの運営会社のほとんどが、物件掲載には宅建業免許の保有が条件としています。

③購入検討者からの問い合わせに対応する

広告を出した後、それを見た人で購入を考えている人から、不動産に関する質問が寄せられます。内覧・実地確認の希望者もいるので、計画的に対応することが必要です。

その際、不動産に関する専門的な内容の問い合わせも考えられるので、前もってどんなことを聞かれるのかを想定し、回答内容を考えておくとスムーズに対応できます。

④契約に必要な書類を用意する

購入者が見つかったら、不動産売却時に締結する契約に必要な書類を用意します。主な必要書類は以下の通りです。

  • 売買契約書
  • 権利証
  • 登記簿謄本
  • 固定資産税評価額証明書
  • 印鑑証明書
  • 収入印紙
  • 領収書および印紙

参考:【不動産売却に必要な書類まとめ】入手・再発行の方法もご紹介

⑤販売後のトラブルに対応する

不動産の売却後、売り主には瑕疵担保責任が生じるため、販売時には見つからなかった欠損、欠陥が発見されたら、売り主が責任をもって対応する必要があります。

参考:不動産売却時の「瑕疵担保責任(契約不適合責任)」について3つのポイントで解説

不動産売却を仲介会社に依頼するメリット

費用がかかるものの、不動産業者に仲介をお願いすることにもメリットは多いです。具体的には不動産の適正価格を把握しやすい、取引時に書類作成などの手間を省ける、などの利点があります。

不動産を販売する際に適正価格を提示してくれる

不動産業者に仲介をお願いすると、不動産に関する細かい価格査定を行ってくれるので、相場よりも安い価格で買われてしまうといった事態を避けやすく、売り手側に有利な価格交渉を行えます。

個人では不動産の適正価格を把握しにくいので、この点は大きなメリットです。

書類作成やトラブルへの対応の手間を省くことができる

不動産の取引や手続きは一定の専門知識が必要です。プロである不動産業者に任せると、素人だけで取引を行う際に生じる不安を解消できます。

また、不動産の売却時に必要となる書類と、書類作成にあたって必要となる情報の収集についても、専門家である不動産業者に仲介してもらうと作業を進めやすいです。

さらに不動産の売却後にトラブルが発生したときも、不動産業者が仲介してくれることにより、時間をかけることなく解決の方法を見つけることができます

個人で不動産売買を行うときはメリットだけでなくデメリットも考慮することが大事:まとめ

不動産を個人で売却する場合、仲介手数料を節約できる、販売活動の自由度が高いなどのメリットがありますが、後に購入者とのトラブルが起きやすい、作業量が多いなどのデメリットもあります。

個人取引によるメリットとデメリットを比較し、さらに不動産業者に仲介をお願いした場合の利点を踏まえて、最も合理的な判断をすることが大事です。

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