【収益物件売却の基礎知識】売却のタイミングや高く売る方法など解説

収益物件の売却

「相続した収益物件を売却したい」
「収益物件の売却は居住用不動産の売却とどう違うの?」

 

こんな疑問にお答えします。

収益物件を売却する際には、居住用不動産を売却する場合と異なり、いくつかの注意点があります。

特に、販売価格やタイミング、税金などについては収益物件を多く持っている不動産投資家であってもきちんと準備をしないと損をしてしまう可能性があります。

今回は、収益物件を売却する際に気をつけるべき点を解説します。

記事の信頼性
監修者:毎日リビング株式会社 代表取締役・宅地建物取引士 上野 健太
不動産業者としての実務経験を活かし、売主の立場で記事を監修しています。
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収益物件の特徴

収益物件とは

そもそも収益物件とはどういったものを指すのでしょうか。

自己で所有と使用をするマイホームと比較すると、収益物件は所有していても他人に貸して賃料を得ることを目的としています。

この場合の年間の賃料収入を取得価格で割ったものを表面利回りといいます。

例えば、賃料収入が月10万円、年間で120万円の物件を2,400万円で購入した場合、表面利回りは5%となります。

表面利回りの計算式

表面利回り=(年間家賃収入÷物件価格)×100

また、この場合の毎月の賃料収入のことをインカムゲインといいます。

これに対して、売却価格と取得価格の差益をキャピタルゲインといいます。先ほどの物件を3,000万円で売却したとすると、600万円がキャピタルゲインになります。

不動産投資家はどういった時に売却を考えるか

不動産投資家の資産形成はインカムゲインとキャピタルゲインのバランスを考えつつ、資産を形成していく必要があります。

収益物件自体が建物である場合は、インカムゲインを狙ってずっと所有していても、築年数が年々古くなれば一般的には賃料が下がる傾向にあるのでいつかはジリ貧になってしまいます。

もちろん、築年数が古くなると空室リスクも高くなります。

そのため、常に収益を最大化するためには、古い収益物件を売却し新しい収益物件を購入し、資産の組み直しを続けていかないといけません

なぜ収益物件の売却は注意が必要なのか

では不動産投資家が収益物件を売却する場合にはどのような点に注意すればいいのでしょうか?

不動産の広告をみると一目瞭然ですが、収益物件の売却よりも一般の方がマイホームを売却しようとする場合の方が数多く存在します。

数が多いだけではなくマイホーム売却は特別控除などの税制も優遇されており、逆に収益物件は何も考えずに売るだけでは損失になりがちで難易度が高いです。

収益物件を上手に売却するためには、事前にかかる費用等を考えて行動しないといけないといけません。

例えばよくあるケースとしては、高く売れず安くなってしまう事例、売却まで非常に長い時間がかかる事例、売却したものの税金でマイナスになってしまう事例などがあります。

そこで、収益物件の売却について「価格」「タイミング」「税金」の3点に分けて説明していきます。

少しでも高く売却するためには

そもそも収益物件の価格はどのように決めればいいのか

よく言われることですが、不動産は同じものが二つとないため、いわゆる定価というものが存在しません。

1億円で売りたい人と、それを1億円で買いたい人がいれば、客観的には1億円の価値がない物件であっても不動産の売却価格になってしまいます。

とはいえ、収益物件の場合は、利回りが基準になることもあるため、ある程度目安となるような価格が存在します。

大きく分けて以下の3つの方法で価格の目安を決めるのが一般的です。

  1. 原価法
  2. 収益還元法
  3. 取引事例比較法

順に解説します。

①原価法

収益物件の価格を決める際に、もしも同じ物件を建てるとしたらどれだけのコストがかかるか、という基準で算出する方法を原価法と呼びます。

築年数が古い場合は、原価法で算出した価格に対して、年間いくらかを減額して算出します。

原価法の利点は、基準となる要素が数値で表されるため分かりやすく、また面積や用途地域なのでの数値補整しやすい点です、この利点があるので担保評価をするために銀行がよく用いる算出方法です。

現金を潤沢に持っている不動産投資家は別にして、大部分の不動産投資家は銀行から融資を受けてローンを組んで購入するのが一般的です。

その際に銀行がどのような計算をして収益不動産の価格を算出しているのか、いくらまでなら融資をしてくれるのかを算出する目安になるのが原価法です。

②収益還元法

収益物件の価格を決める際に、その物件が将来幾らの利益を生み出すことができるのかと将来の価値を算出してから、現在の価格を導く方法を収益還元法と呼びます。

収益還元法の利点は、実際の利回りから計算すれば、現実の数字と近い数字が算出されることになり、買い手の考えに一番近くなりやすいという点です。

しかし、収益還元法はその計算方法から分かるように、収益物件のために考え出された計算方法なので、マイホームなどの利益を生み出さない物件については価格を算出することができません。

また、将来いくら利益を生むか、という未来への期待が価格の根拠になるため、実際の数字よりも期待値込みの価格が出てしまう場合もあります。

③取引事例比較法

収益物件の価格を決める際に、その収益物件と似たような物件が過去にいくらで取引されたかという事例を調べて、その価格から物件の価格を決める方法を取引事例比較法と呼びます。

取引事例比較法の利点は、比較対象が実際に取引された事例なので、適切な事例と比較すればいわゆる市場の相場を限りなく近い価格が算出できることです。

適切な事例とは、最近行われた取引で、場所も近接しており、売却理由なども同一であるような事例ですが、このような事例はなかなか存在しません。そのため、時期や場所などの要素については慎重に補正をして算出する必要があります。

また、事例が多いほど適切な比較対象が選べるのですが、都市部は事例が多く、地方は少ないため、地方の物件にはやや不向きとも言えます。

参考:国土交通省「不動産取引価格情報検索

売り時はいつか、「高く」 or「早く」

収益物件の価格を決める際に、どのタイミングで売るのか、も価格に大きく影響します。

不動産を売却しようと決意し値段を決めて広告を出すと、多くの場合は指し値と呼ばれる価格の交渉を受けます。

特に収益物件のように、買い手も不動産投資家の場合は相手も事業として購入を検討するのですから、値段交渉はよりシビアになります。

この際に売り手が迷うのは「高く売りたいから待つ」のがいいのか、「早く売りたいから交渉に応じるのか」でしょう。

売り出しをしてからなかなか売却できない収益物件の場合は迷いと同時に焦りもある場合もあるでしょう。

この場合参考になるのが、「なぜ売却しようと思ったか」という売却理由と、「交渉で決まった価格なら最終的な税金支払いはいくらか」という収益の着地点です。

例えば収益物件にもかかわらず、ずっと空室が続いており、ローンの支払いだけをしているような場合は、長期的に保有しているだけでマイナスになってしまうため、早く手放したいと考えるでしょうし、逆に現在は収益が上がっているのであれば、満足できない価格では売却できないと考えるでしょう。

また、どうしても現金が必要なので売却して現金化したい場合は価格についてはある程度妥協も必要になったりします。

このあたりは、タイミングによって千差万別なので一般化することは難しいのですが、収益物件の場合はマイホームと異なり特別控除がないので税金まで考えないと結果的にマイナスになる可能性があるので注意が必要です。

誰に売るのがいいのか「別の不動産投資家」or「買取業者」

収益物件の価格を決める際に、どういった買い手を想定しているか、も大きな要素となります。

収益物件の性質上、買い手は「別の不動産投資家」か「買取業者」になるのが一般的です。

不動産投資家に売却をする場合は相手次第ですが、いわゆるオーナーチェンジ案件は現在部屋が賃貸中かどうかが価格に大きく影響します。

逆に、買取業者を買い手として想定する場合は、リフォームを自社で手掛けている業者が多いため、空室や賃借人の属性はあまり考慮されない代わりに価格については厳しく交渉されることが多いです。

参考:不動産売却の選択肢「業者買取」とは?【早期売却にはうってつけ】

売却に有利なタイミングはいつか

収益物件売却のタイミング

収益物件の所有者にとって売却を考えるタイミングはいつごろでしょうか。

3つの場面に分けてタイミングを検討してみます。

  1. 購入してから5年目を経過した時
  2. 一棟の建物で大規模修繕が必要になってきたとき
  3. 新しい物件を購入しようとするとき

順に解説します。

①購入してから5年目を経過した時

相場よりかなり安価で購入した場合を除き、不動産投資家が収益物件を購入する時にはインカムゲインとして収益を得ることを目的としています。

いわゆる賃料収益なので購入してすぐに売却を検討する不動産投資家は多くはないです。

しかし、購入後5年以上経過して所有期間が5年を超えると譲渡所得税率が下がるのでこのタイミングで売却を検討する不動産投資家が多いです。

②一棟の建物で大規模修繕が必要になってきたとき

収益物件の中でも、マンション一棟、アパート一棟というような建物一棟を所有している不動産投資家にとっては、外壁塗装などの大規模修繕のタイミングに売却を検討するケースが多いです。

築年数がある程度経過すると経年劣化により建物のあちこちが傷んでくるのは避けることはできません。

しかし、不動産投資家にとってまとまった金額を掛けて修繕するよりも、多少安くなっても売り抜けてしまいたいという気持ちがあるのも事実です。

③新しい物件を購入しようとするとき

手元に潤沢な資金がある方を除き、新しく収益物件を購入しようと検討する際にたいていの場合は銀行から融資を受けての購入を検討します。

2018年にスルガ銀行ショックで金融機関が融資の引き締めを行ったのは記憶に新しいかと思いますが、以前は全額融資をしていた金融機関でも、方針が変わり2割から3割の頭金を求めてくるところも増えています。

こういったケースの際には、手持ちの収益物件を売却して、その費用を新しい物件に充てる、という買い替えを検討する場合があります。

買い替えは、金融機関からすると新規融資の実績ができ、不動産業者にとっても手数料が複数得られ、不動産投資家にとっても資産の組み換えができるタイミングともいうことができます。

意外と高額な税金に注意

忘れがちな税金と費用

このように収益物件を売却する際には価格を決めたり、売るタイミングを選んだりと様々な注意点がありますが、忘れがちなのが売却時・売却後にかかる税金です。

納税のタイミングは売却時とずれるため、忘れたころに納税をすることとなり、現金不足にならないように気をつけましょう。

売却すると必ずかかる税金

収益物件がいくらで売却できたとしても必ずかかる税金があります。金額にかかわらず、売却利益がでなくても課税される税金は以下の2つです。

  1. 印紙税
  2. 登録免許税(抵当権抹消登記)

①印紙税

収益物件を売買する際には必ず不動産売買契約書を作成します。この契約書は「不動産の譲渡に関する契約書」と呼ばれ、収入印紙を貼る必要があります。

収益物件の譲渡価格によって印紙の金額は異なるので、契約前に必ず確認して正しい金額の印紙を貼るようにしましょう。
また、現在は軽減措置も取られているので、国税庁のサイトで最新の情報を確認するようにしましょう。

参考:不動産売却でかかる印紙税とは?納付方法や軽減税率などの基礎知識

②登録免許税(抵当権抹消登記)

収益物件に金融機関の抵当権がついている時は、売買の条件に抵当権の抹消の項目が追加されます。
これは金融機関に残りのローンを支払う代わりに、抵当権の抹消に承諾をしてもらうという流れになります。

この際の抵当権抹消は、収益物件の売主の負担で行うことが多いです。金額は不動産1個に付き1,000円です。土地と建物だと不動産2個と数えるので2,000円と数えます。

利益が出るとかかる税金

所得税と住民税が対象になります。

仮に5年以内に売却して利益が出るケースだと、所得税と住民税を合わせて 39.63%が税金として課税されるので、最高で利益の約4割を税金として納めないといけなくなってしまいます。

①所得税(譲渡所得)の短期と長期、復興特別所得税

収益物件の売却金額から取得金額と譲渡費用を差し引くと差益を計算することができます。この差益がプラスになれば収益物件の売却によって利益を得たということになります。この利益にかかるのが所得税(譲渡所得)です。

譲渡所得は不動産の保有期間によって、短期と長期に分けられ税率が大きく変わります。保有期間の計算は、「収益物件を売却した年の1月1日」を基準に決まるので注意が必要です。
所有期間が5年以下の短期の譲渡所得税は、復興特別所得税を含めると 30.63%になります。

これに対して所有期間が5年を超えている長期の譲渡所得税は、同じく復興特別所得税を含めると15.315%です。

参考:不動産売却は短期譲渡・長期譲渡のどちらがお得?3つのポイントで徹底比較

②住民税の短期と長期

所得税と同じように住民税(市町村民税及び県民税)にも所有期間に応じて短期と長期があります。

短期の住民税は9%、長期の住民税は5%です。

税金以外の費用

これらの税金以外にも収益物件を売却した際にはかかる費用があります。不動産売買に関わる業者への手数料などです。

税金と異なり、事前に割合が明確になっているわけではありませんので契約前に必ず費用と支払い時期を確認しましょう。

  1. 不動産業者に支払う費用、広告料、仲介手数料
  2. 司法書士に支払う費用、登記費用
  3. 銀行に支払う費用、繰り上げ返済手数料

順に解説します。

①不動産業者に支払う費用、広告料、仲介手数料

収益物件の売却に関わった不動産業者への費用です。
内訳としては、インターネットや紙媒体への広告費用(場合による)と媒介契約に対する報酬です。

宅建業法上は受け取れる報酬の上限が定められており、基準は売買の対象となる不動産の価格です。
例えば、400万円以下の部分は18万円、400万円を超える部分には3%の金額が報酬の上限です。

②司法書士に支払う費用、登記費用

実務上不動産売買は売買金額が高額になるため、契約締結と金銭の授受のタイミングが分かれることがほとんどです。

契約時には代金の一部である手付金などが支払われ、残金の支払いは銀行の応接室などでおこないます。
この手続きを決済と呼びます。この際に所有権移転の手続きのために同席するのが司法書士です。

残代金の支払いと同時に所有権移転のための書類を受け渡したり、売却の意思確認をしたりするなどの業務を行います。
司法書士の報酬については明確な決まりはありませんので、契約時に支払う報酬を確認しておくのが一般的です。

また報酬と異なり、登記費用はどの司法書士に依頼しても同じですが、この登記費用も決済時に必要になります。

参考:不動産売却時の決済方法や所要時間・必要書類を宅建士が徹底解説!

③銀行に支払う費用、繰り上げ返済手数料

仮にローンがまだ残っている収益物件を売却する際には、銀行にローン残金と共に一定の手数料を支払う必要がある場合があります。

銀行側からすると返済を続けてくれれば得られた利息分の利益について、繰上げ返済されると得られなくなってしまうので、違約金としての性格も一部はあります。

具体的な金額は金融機関によって様々で、手数料なしの銀行もあれば、かなりの高額になる銀行もあります。銀行との金銭消費貸借契約時に必ず説明を受けているはずなので契約書を見直してみましょう。

成功のカギは売却準備と不動産会社選び:まとめ

以上が収益物件を売却する際の値段の決め方、タイミング、税金についての一般的な注意点です。

とくに税金部分は法改正も多く売買に慣れた不動産投資家であってもきちんと準備をしないと損をしてしまう可能性があるため、必ず最新の情報を確認して利益をきちんと出せるような売買をしてください。

そして、売却成功には優良なパートナー(不動産会社)選びが最も重要です。

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