借地権の3つの売却方法と相続税評価額の計算方法を徹底解説!

借地権

保有不動産が「所有権」ではなく「借地権」の場合、所有権と同じように売却できるの?

 

こんな疑問にお答えします。

借地権は、所有権と異なり専門的な知識が必要になります。
しかし、正しく理解して購入や取引をすれば所有権よりもライバルが少なく、場合によっては周辺の相場よりもかなり有利に進められる可能性を秘めている取引形態です。

有利に交渉を進められるよう、借地権の制度やメリット・デメリット、また借地権の相続税評価額の計算方法ついて正しい知識を持って交渉に臨みましょう。

記事の信頼性
監修者:毎日リビング株式会社 代表取締役・宅地建物取引士 上野 健太
不動産業者としての実務経験を活かし、売主の立場で記事を監修しています。
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借地権とは

借地権とは、その字の通り土地を他人から借りる権利のことです。

土地を借りようとする人の目的は建物を建てることが一般的なので、借地権を得た人はもちろん土地の上に自由に建物を建てることができます。

ちなみにこの時に借地権が付けられた土地のことを「底地」と呼びます。

借地権は土地を借りる権利なので、通常の契約よりも長期間になるケースが一般的です。短い借地権でも20年、長いと50年以上にわたって存続することとなります。

このように50年間も借り続けていれば、もはや所有していることとほとんど変わりがない状況になってしまう場合もあります。

このように借地権は、土地を借りる権利にもかかわらず、所有権と似たような部分も多くあり、違いが分かりにくくなっているのが特徴です。

底地に関する詳しい記事は下記をご覧ください。

>>【底地の売却】3つの方法と相続税評価額の計算方法

借地権の3種類

借地権には、旧法借地権、普通借地権、定期借地権の3種類が存在します。

・旧法借地権

旧法借地権とは、平成4年に廃止された借地法に基づく借地権です。借地権者に大変有利な法律になっている点が特徴です。

廃止されてしまいましたが、平成4年以前に契約をした借地権には適用されるため、現在でも目にすることは少なくありません。

・普通借地権

普通借地権とは、現在の借地借家法に基づく借地権です。契約期間はありますが、終了後に更新の申し出をすることによって更新することができます。

土地所有者には更新を断る正当な事由があれば断れますが、すでに建物が建っていることからなかなか認められないのが実状です。

・定期借地権

定期借地権も、現在の借地借家法に基づく借地権です。普通借地権と異なるのは期間が明確に決まっていることです。

契約期間満了後は、借地権者は建物を滅失して契約終了になります。

意外と身近な借地権

不動産業にかかわりがない方は広告などでは目にすることが少ない表現かと思います。

しかし実際には、都市部でも地方でも、所有者が寺社仏閣などの場合や昔からの住宅街である場合には、所有権ではなく借地権が元になり建物が建っているケースも少なくありません。

そのため、借地権を専門にしている業者も少数ですが存在します。また、借地権に関わるケースは問題が長期化しやすい傾向にあるため、相続案件がらみのケースも多く存在します。

このように、借地権は完全な所有権に比べて、契約が長期的になり記憶も散逸しやすくなること、借地法が何度も法改正されているので底地と一口に言っても、どの時代の借地権かによって底地の内容が全く異なることから、一般の方には分かりにくい権利になってしまっているのです。

借地権のメリット

それでは、借地権のメリットはどういったものが考えられるでしょうか。

一般的には、借地権は所有権に比べて安い、と表現されることが多いのですが、もう少し深掘りして初期費用(イニシャルコスト)と、維持費用(ランニングコスト)に分けて説明します。

費用が安価

第一に、初期費用とは新しく借地権を取得する際にかかる費用です。借地権は所有権に比べて最初に支払う費用がかなり抑えられます。

土地を所有権として購入する場合に比べて、借地権は平均すると7割前後の場合が多く、また不動産取得税や登録免許税などの費用もかからないため、全体としては費用がかなり安価になります。

納税義務がない

第二に、維持費用としての固定資産税や都市計画税の支払いの必要がないことです。

借地権は土地を所有せずに使用する権利だけを得ることができるため、所有者としての義務はありません。
つまり、土地にかかる税金を支払う必要がないのです。

建物を建築して所有する場合は、建物に対する税金は当然かかるのでご注意ください。

借地権のデメリット

では逆に、借地権のデメリットはどのようなものがあるのでしょうか。

自分の所有にならない

第一に、土地を借りて賃料を支払っているため、どれだけ長期間賃料を支払い続けても、土地が自分のものになることはないという点です。

借地権のように長期間建物を所有し続けていると、賃料も支払っているにもかかわらず、自分のものであると錯覚する方も多いようですが、土地が自分の所有物になることはありません

自由に処分できない

第二に、借地の上に建物を建てたり売却したり、増改築したりする際に土地所有者の承諾が必要になる場合がある点です。

本来は借地権の上の建物であっても自由に売却できるはずなのですが、法律上は土地所有者の承諾が必要になります。

万が一、土地所有者からの承諾がない場合は、裁判によって裁判所が代わりに承諾をしてくれる手段もあります(借地借家法19条)が、なるべく裁判をするのは避けたいものです。

また、借地権の上の建物だと購入希望者が限られ、価格も下がる傾向にあります。

承諾が不要な相続と、承諾が必要な遺贈の違い

似たような制度として相続と遺贈があります。

相続の場合は本人の意思に関係なく発生するので、借地権の相続が発生しても土地所有者の承諾は必要ありません。

これに対して、遺贈は亡くなったら発生する贈与なので、本人の意思で贈与するという手続きの一つです。
そのため、遺贈は相続と異なり土地所有者の承諾なしに行うことはできません。

適正に評価されにくい

第三に、借地権の価値自体はまだまだ一般の人には余り知られておらず、例えば銀行からの担保評価に影響する可能性があるということです。

きちんとしたプロの業者であればきちんと借地権も評価できるのですが、借地権についてよく分からないから低めに評価しよう、というような銀行も中には存在するのです。

借地権の3つの売却方法

それでは、借地権を売却しようと考えたときに取るべき3つ売却方法を解説していきます。

土地所有者に売却する方法

これはおそらく借地権者が売却を考えたときに、最初に検討する方法です。

借地権だけではなく上に建っている建物も一緒に売却するため、建物買取請求と混同されるケースも多いのですが、一応は別の手続きです。

土地の所有者からすると自分の土地を使う権利を購入する形になり、トラブルなどが起こりにくい安心感はあります。

ただし、場合によっては所有権の混同によって借地権が消滅してしまう場合もある点について、注意すべきです。また、借地権が抵当権の目的になっている場合は消滅しないなどの例外もあります。

いずれにせよ素人では手に余る分野ですので、なるべく専門家を入れてきちんと売買の媒介に入ってもらうことをおすすめします。

第三者に売却する方法

借地権は、第三者に売却することができます。

一般的な価格は完全な所有権の7割前後になることが多いです。

また、借地権を売却する際には土地所有者の承諾が必要になり、契約内容によっては承諾料などを支払う必要がある場合もあります。

なお、借地借家法では、一度建築した建物を壊すのは社会的に損失が発生することを理由として、なるべく借地権を存続させて建物を残すように考えてくれる傾向にはあるので、土地所有者が承諾をしてくれない場合でも裁判所が代わりにしてくれることになります。

しかし、土地所有者とのトラブルがあると購入を検討しようとする層はかなり限定されるため注意が必要です。

また、買取の不動産業者も存在します。専門業者は対応が早く多少権利関係が複雑だったり土地所有者とのトラブルがあっても買うケースが多いため、売り手が見つからないときにはかなり重宝しますが、他の買い手に比べて買取価格がかなり安くなります。

借地権と底地を一緒に売却する方法

最後に、借地権と底地を一緒に売却するという売却方法があります。

この方式だと、2番目の方法と異なり借地権を買う人は底地も取得できるため、一般の方でも購入を検討できることになります。

購入者も限定されないため買い手も探しやすくなります。

つまり、完全な所有権が目的物となり、借地権と底地、建物の権利を同時に手に入れることができるのです。

ただし、この方法は借地権者だけではなく、底地の所有者も売却したいと考えることが条件であり、必ずしも一人ではできない売却方法なので注意が必要です。

借地と底地を等価交換して売却する方式

土地の所有権と借地権を、借地権付きの土地として売却する方法もあります。このような形にすることで実質的には完全な所有権と同じような形で売却することが可能です。

ただし、この方法も土地所有者の協力が必要なのでご注意ください。

どの売却方法が一番有利なのか

上記の通り、複数の売却方法をご紹介しましたが、それではどの売却方法が一番借地権者にとって有利なのでしょうか。

結論からいうと、状況によって異なるので一概に決められないということになります。

例えば、「土地所有者に売却する方法」は、買ってくれれば良いのですが、必ずしも買いたいと思ってくれるわけではないのです。

そもそも自分で使用するつもりがないから借地権を設定しているので、貸している方が気楽という人も一定程度存在するため、借地権を売りたいと申し出ても買ってくれるとは限りません。

「第三者に売却する方法」は、前提としてかなり難易度が高くなります。現時点では大部分の人は土地を所有したいという考えがまだ一般的だからです。

また、借地権を買おうと検討する人がそもそも少ないことに加えて、銀行が担保評価しにくいケースもあってローンが組みづらい点もあります。

そのため、価格としては安くなるものの買取専門の不動産業者の存在は大きく、特に複雑な権利関係や相続案件でのトラブル対応には非常に有用な存在です。

最後の「借地権と底地を一緒に売却する方法」は、土地所有者も底地を売ろうとするタイミングでないといけないというのが一番のハードルとなります。

簡潔にいうと土地所有者との関係性や協力が得られないと選択できない売却方法です。

土地の上に建物がある場合は、底地の所有権、建物の所有権、建物の借地権の3つ同時に売買することになり、それぞれの所有権者が異なる場合は複雑な売却方法となります。

権利関係が複雑なので仲介業者の選任がかなり重要となることでしょう。

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相続税評価額の計算方法

上記の通り、借地権は目に見えない土地を使用する権利ということで一般には分かりにくいのですが、税金の評価については分かりやすくなっています。

基本的な考え方は、
「借地権の価値」=「自分が使用する場合の土地(これを自用地といいます)」に一定の係数を掛け算します。

例えば、借地権の割合が70%と決められた土地の場合は、自用地の評価額に70%を掛けた数字が借地権の評価額となります。

モデルケースを使って相続税評価額を計算

日本の場合は誰でも借地権の計算が簡単にできるように国税庁がホームページで係数を公開しています。

具体的な例に沿って算出してみます。

まずは、底地の住所を国税庁が出しているホームページで検索します。

財産評価基準書路線価図・評価倍率表」というサイトで、底地の住所を入力して、まずは路線価を調べます。

サイトの表記に従って、都道府県、市町村、町名と選択をしていくと、路線価図が表示されます。この地図には1平方メートル当たりの路線価と借地権割合が道路に記号で表記されています。

アルファベットは借地権割合を表示しており、Aが90%、Bが80%で、Gの30%まで7段階に分かれています。例えば、前の路線に「200D」と書かれていた場合について計算してみましょう。

仮に底地が60平方メートルあるとすれば、底地は1平方メートル当たり 200千円なので 12,000千円と評価されるという計算になります。

続いて借地割合の係数を掛け算します。アルファベットがDなので、この土地の借地割合は 60%と評価されます。

つまり、この土地の価値は 12,000千円で、借地割合は60%なので、 7,200千円( 720万円)として相続税評価をされる借地ということになります。

路線価図の説明

参考:国税庁ホームページ「路線価図の説明

路線価に関する詳しい記事は下記をご覧ください。

>>不動産売却に活用できる路線価の見方を4つのポイントで解説

まずは不動産会社に査定依頼:まとめ

以上が、借地権に関する3つの売却方法の説明と、相続税評価額の計算方法の概要となります。

借地権は、正確な知識を持って取引できれば周辺の相場よりもかなり有利に売却を進められるメリットの多い土地とも言えます。売却方法をきちんと検討した上で、その借地権にあった最適な方法を選択してください。

まずは、不動産会社に無料査定を依頼をしてみるのも良いでしょう。

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