- 不動産売却の現状渡しって何?
- 現状渡しで不動産を売却したほうがお得なの?
- 現状渡しで不動産売却するときの注意点を知りたい
こんな悩みを解消します。
不動産売却では、一般的に売主が壁のヒビや水回りの故障といった住まいの瑕疵(問題点)を修理してから引き渡します。
しかし、物件の状態や築年数、売主の意向によっては「現状渡し」という方法で買主へ引き渡す場合もあります。
不動産売却における現状渡しとは、具体的にどのような手続き・契約スタイルのことを指すのでしょうか。
そこで今回は、現状渡しについての解説と、不動産売却の際、現状渡しを選ぶ際のメリット・デメリットなどを解説していきます。
監修者:毎日リビング株式会社 代表取締役・宅地建物取引士 上野 健太
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目次
現状渡しとは目に見えるトラブルを補修せずに引き渡すこと
不動産売買における現状渡しとは、壁のヒビなど明らかな住宅トラブルを、補修・修理せずにそのままの状態(現状)で買主へ引き渡すことです。
一般的な不動産売買では物件の破損箇所を手直ししてから引き渡す
一般的な不動産売買手続きでは、売却物件の破損箇所を修復または補修してから引き渡します。
理由は簡単で、以下のような状態の家は売れづらいからです。
- 壁にヒビが入っている
- 壁紙がはがれている
- 給湯器が壊れていてお湯が出ない
- お風呂の浴槽が一部破損している
- 雨漏りしている
中古不動産売買では、同地域・同程度の間取りの物件を比較されます。ある程度同じくらいの金額なら、よりきれいで問題のない物件を購入したいと考えるのは当然の心理です。
主に比較して買うかどうかが決まる以上「メリットの多い物件」よりも「デメリットの少ない物件」のほうが好まれやすいことは知っておく必要があります。
ヒビ・傷・破損などを補修せずに引き渡すのが現状渡し
不動産売買における現状渡しとは、字のとおり「現状のまま物件を引き渡すこと」です。より厳密にいうと「売主が知っている住まいの瑕疵(欠点)」を、修理・修復せずに買主へ引き渡すことを指します。
この記事では「現状渡し」と呼んでいますが、不動産会社や契約書によっては「現状有姿」「現状有姿取引」と呼ばれる場合もあるため、覚えておきましょう。
なお、不動産関連の用語として有名な「原状回復」というものもありますが、原状回復と現状渡しはまったくの別物です。
原状回復は、主に賃貸物件の退去時に使われている用語で「物件から出ていくときに借りたときの状態に戻す」作業のことを指します。経年劣化によるもの、管理会社の工事で変更してもらったものは別ですが、物件を借りてから個人的に取り替えたものはすべて元通りに戻す必要があります。
現状渡しは、賃貸ではなく持ち家の売却時に使われる用語です。現状渡しと原状回復を混同していると、退去の際に混乱してしまうので、両者の違いも押さえておきましょう。
現状渡しのメリットは補修費用などがかからないこと
現状渡しで不動産を売却するメリットは、問題箇所の補修費用を節約しつつ物件を売却できることです。
補修費用を節約できる
一般的な中古不動産売買をする場合、住まいを売却する前に売主が自費で破損している部分を修理することになります。
修理にかかった費用を売却代金に上乗せできれば、実質的に損することなく不動産売買を成功させられますが、原則として中古の不動産には相場があり、相場より値段が高くなるとなかなか売れません。
修理費用が高くなってしまったとしても、必ずしも修理費用を回収できるとは限りません。
中古不動産を手放すときは「そもそも修理すべきか」「修理にいくらまでかけられるのか」の判断が必要不可欠です。
しかし「現状渡しで売る」場合、修理費用を負担しなくてよいので、売却にあたっての必要経費を節約できます。
補修の作業や工事をしないので早く売り出せる
工事の内容にもよりますが、業者に修理や補修を頼む場合、以下のような作業が必要になります。
- 業者を探す時間
- 相見積もりを取ったうえでの業者選び
- スケジュール調整
- 工事
時期によっては、工事業者の日程が空いておらず、物件の売り出しが遅れてしまうこともあります。
不動産会社による査定は修理をする前でも受けられますが、工事が終わるまで内覧などの対応や不動産情報サイトへ掲載するための物件写真撮影などはできません。
しかし、最初から補修工事などを考えずに現状渡しにすると決めてしまえば「家を売りたい」と考えてからすぐに不動産会社へ連絡し、査定を受けて売り出せます。
「転勤の予定があって売却を急いでいる」といった事情がある場合は、現状渡しで売却するほうがよいでしょう。
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現状渡しの注意点は売却額が下がってしまうこと
現状渡しで不動産売却をする際は、以下の点に注意が必要です。
- 売却価格が相場より安くなりがち
- 家具・家電・ゴミなどの撤去が必要
- 不動産の問題点を書面化する必要がある
順にに見ていきましょう。
問題を抱えているため売却額が相場よりも安くなりがち
中古不動産市場は、欠点や問題点の少ない物件が人気です。
中古という性質上、使用感や経年劣化はさほど問題にならないとはいえ、たいていの場合、周辺に似たような間取りで同じような金額の物件が売り出されています。
価格が同程度なら、欠点の少ない物件にお金を出したいと考えるのは当然です。
「問題点を解決せずに売り出す」以上、現状渡しの不動産は相場より価格を下げないと売るのが難しいというリスクも知っておきましょう。とはいえ、不動産売却において重要なのは、損をしないことです。
新しい住まいの買い替え費用や、古い住まいを維持する費用などを取り戻せる金額なら、多少相場から値下げをしたところで損をするわけではありません。
むしろ、相場より安くして売り出すことで多くの買主の興味を引き、短期間で物件を売却できるケースもあります。
家具・家電やゴミを撤去する必要がある
「現状渡し」は「家のなかの私物やゴミも残しておいてよい」ということではありません。家のなかの家具・家電・ゴミなどきちんと撤去しましょう。
不要品や粗大ごみなどをそのまま置いていく場合、別途売買契約書を交わす際にその旨を書面化しておく必要があります。
そのままゴミとして処分できるものはともかく、家電リサイクル料金が必要な家電や回収が必要なものを処理する場合はお金がかかります。残置物の扱いについて売主と買主の間で同意が取れていないと、余計なトラブルになることもあるため、覚えておきましょう。
参考:不動産売却では残置物がトラブルを招く!【処分方法とコツを解説】
住まいの問題点は不動産会社の査定時にきちんと伝えよう
現状渡しで不動産を売却する場合は「売却の時点で売主が知っている住まいの問題点」を漏れなく不動産会社に伝えなくてはいけません。
以下のような小さな問題点も隠さず伝えましょう。
- 扉の建て付けが悪い
- 窓ガラスにヒビが入っている
- 壁の一部に亀裂がある
- 給湯器の調子が悪くお湯が出るまで時間がかかる
- 排水口の流れが遅い
「黙っていれば分からないのでは?」と考えるかもしれませんが、不動産のプロが見れば明らかな問題点や欠点はすぐに分かります。
また、2020年4月からは「売却の時点で売主が知っている問題点」も「売主が知らない問題点」も契約書に明記しておかないと、売却後に返金や契約解除、損害賠償などを請求されるようになったので注意が必要です。
法改正の影響で、売主が負うべき責任がより重くなっているため、住まいの問題点は確実に不動産会社の担当者へ伝え、書面化したうえで買主と共有しましょう。
トラブルを避けるコツは綿密な検査や補修の手配
現状渡しは、売主と買主の認識や知識量にずれがあると、トラブルに発展します。
売却後に「こんな状態だとは聞いていない!」といったクレームをつけられないように、以下のような不動産売却トラブルを防ぐコツを知っておきましょう。
- 第三者機関へ検査をお願いする
- 住まいの問題点を正直に不動産会社に教える
- 必要な補修工事の費用やおすすめ業者などの情報を伝えて売る
- 内覧に同席して売主の口から問題点を説明する
第三者機関の住宅検査を受け売却する
中古不動産を売却する際に、もっとも大きな問題になるのが「中古住宅ならではの不安感」です。
「中古だし品質が悪かったどうしよう」
「隠れた問題点が購入後に見つかったら面倒」
といった不安要素があるため、中古の不動産は高額売却や短期売却をするのが難しいという欠点を持っています。
そこでおすすめしたいのが、中古住宅の品質や状態をチェックする第三者機関の利用です。売主とも不動産会社とも違う機関に住まいの状態を検査してもらえば、客観的な不動産の状態を買主に説明できます。
参考:【宅建業法改正】建物状況調査(インスペクション)説明が義務化
住まいの問題点はすべて不動産会社に伝える
自分の知っている住まいの問題点は、すべて不動産会社に伝えましょう。欠点や問題点を隠すメリットはありませんし、むしろ欠点を隠して売ることで、トラブルに発展してしまいます。
トラブル予防という観点から考えると、住まいの情報はどれだけ小さなことでも不動産会社と共有しておくことをおすすめします。
参考:不動産売却のトラブル【瑕疵担保編】事例を知って事前に回避!
補修工事などの段取りを用意してから売却する
現状渡しは「壊れている箇所または不調な箇所の修理・補修」が必要です。事前に修理の必要な箇所や修理金額、おすすめの業者などを調べたうえで買主へ伝えられるようにしておくと、買主の不安も解消でき、不要なトラブルを避けられます。
内覧に同席して補修内容を説明する
買主の不安を軽減するという意味では、買主として内覧に同席し、自分の口で不動産の問題点について説明することもおすすめです。誠実さをアピールすることで、ライバル物件との差別化を図ることもできます。
築年数の古い物件は現状渡しで早く、楽に手放そう:まとめ
築年数が古くて修繕費用がかさんでしまう物件を売りたい場合や、事情があって補修作業を待っている余裕がない場合は、現状渡しで不動産を売却しましょう。
ただし、現状渡しとはいっても、家のなかにある家具・家電・ゴミなどは売主による撤去が必要です。
また、法律上、売主の知っている問題点も知らない問題点も、書面にして買主へ伝える必要があります。
手を抜くとトラブルになるだけでなく、期待した金額や期間で不動産売却できなくなってしまうので、現状渡しをするときは売却の準備に力を入れましょう。
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