「最近よく聞く空き家税ってなに?」
「空き家税はどんな場合に課せられる?」
こんな疑問にお答えします。
京都市は、全国初となる「空き家税」を2026年度に導入することを発表しました。正式名称は「非居住住宅利活用促進税」
この空き家税は、普段人が住んでおらず利用されていない住宅に対し、土地建物の評価額に応じて課税されます。
今後全国にも広がる可能性がある「空き家税」について詳しく解説していきます。
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空き家税の対象となる住宅
空き家税の対象となるのは以下の3つ全てに該当する住宅です。
- 空き家・別荘・セカンドハウス
- 市街化区域内にあり、普段住んでいる人がいない
- 住宅の所在地に住民票がある人が誰もいない
空き家税導入に踏み切ったワケ
京都市はかねてより空き家や別荘、セカンドハウスといった非居住住宅が、市の活性化や防災・防犯、近隣の居住者の住宅環境に悪影響を及ぼす原因のひとつになっていることが課題となっていました。この非住居住宅は市の試算で約1万5,000件にも上ります。
慢性的な住宅供給不足もあり、京都市の人口は2021年の1年間で11,900人(約1%)減少し、減少幅が全国の自治体で2年連続最大となっています。また、2022年の転出超過は2,228人で、25~29歳の若年層が最大の流出層でした。
京都市は建物の高さ制限が最大31メートルという全国でも厳しい規制があり、高層マンションの建築も難しく、なおかつマンション価格の高騰もあり、そのことも若い世代の市外への流出の一因となっています。
また、空き家・別荘・セカンドハウスなどの非住居住宅には以下のような問題があります。
- 市内に空き家が多く新たな住居が建てられないので、若年層や子育て世帯が流出してしまう
- 京都市への移住希望者がいても住宅を供給する土地・建物がない
- 普段住んでいる人がいない住宅が増えると、防災・防犯面での不安がある
- 空き家は手入れ不足による景観の悪化や、老朽化により近隣の住民の身にも危険が及ぶ可能性がある
- 普段住んでいる人がいないため、地域コミュニティの衰退化が懸念される
京都市はこのような空き家などに課税することで空き家を売却したり、賃貸に利用したりしてもらい、市内に住居を増やして若い人達や子育て世代の層にとどまってもらうのを狙いとしています。
空き家税の概要
空き家税導入の経緯が分かったところで、次は空き家税の制度の概要をみていきましょう。
空き家税課税対象
先述したとおり、京都市内にある空き家や別荘、セカンドハウスが対象となります。
その中で以下に当てはまる建物に課税されます。
- 市街化区域にある
- 固定資産評価額が20万円以上
- 戸建てあるいはマンション
空き家税が課税免除される物件
- 事業の用に供しているもの又は1年以内に事業の用に供することを予定しているもの
- 賃貸の募集又は売却を予定していて開始日から1年経過していないもの
- 固定資産税が非課税又は課税免除とされているもの
- 景観重要建造物と指定されたものその他歴史的な価値を有する建築物として別に定めるもの
- 上記以外に公益上その他の事由により市長が課税を不適当と認めるもの
空き家税の課税額
空き家税は、「家屋価値割」と「立地床面積割」の合計額で算出されます。
家屋価格割とは、非居住住宅に係る固定資産税の課税標準となるべき価格(「家屋」の固定資産税評価額)を基に計算され、税率は0.7%です。
家屋価格割:家屋の固定資産税評価額×0.7%
また、立地床面積割とは、非居住住宅の土地の固定資産評価額を基に、敷地の土地1㎡当たりの固定資産評価額×家屋の延床面積で計算され、税率は、家屋の固定資産税評価額により3段階設定されています。
立地床面積割:土地1㎡当たりの固定資産評価額×家屋の延床面積×3段階の税率
家屋価値割の課税標準 | 税率 | |
家屋価値割 | ー | 0.7% |
立地床面積割 | 700万円未満 | 0.15% |
700万円以上900万円未満 | 0.3% | |
900万円以上 | 0.6% |
この二つの合計額が課税額となります。
ただし、資産価値が低く売却が難しい不動産にも配慮するため、空き家税施行から5年間は家屋の固定資産税評価額が100万円に満たない非居住住宅は対象外にするとしています(5年経過後は20万円)。
また、所有者が死亡した場合は3年間課税の猶予があります。
その他にも所有者の転勤や海外赴任、入院、老人ホームなどの高齢者施設へ入所などの場合も、申請をすれば減免措置を受けることが可能です。
上記の条件に当てはまり、「空き家税」の対象外になるためには、空き家税の課税基準日となる年の1月31日までに申告書の提出が必要です。
延床面積 約100㎡
家屋の固定資産税評価額 約270万円
1㎡あたりの土地の固定資産評価額 約10万円
家屋価値割:270万円×0.7%=18,900円
立地床面積割:10万円×100㎡×0.15%=15,000円
合計:約33,900円(年間)
専有面積 約60㎡
家屋の固定資産税評価額 約270万円
1㎡あたりの土地の固定資産評価額 約7万円
家屋価値割:270万円×0.7%=18,900円
立地床面積割:7万円×60㎡×0.15%=6,300円
合計:約25,200円(年間)
京都市は、この空き家税の課税対象となる物件が約15,000件、税収が年間で約9億5,000万円と見込んでいます。
空き家税の対策
京都市に前述した要件に該当する空き家を所有していると、固定資産税・都市計画税、さらに空き家税まで課税されることになります。
税負担を増やさないためには主に二つの方法があります。
空き家を売却する
売却すると、空き家税だけではなく、固定資産税を払う義務もなくなります。また、売却を予定している非居住住宅も免除されます。(売却を開始した日から一年以内に限ります)
空き家税施行直前にあわてて売却活動を始めても、その時には市場に多くの売却物件が出回っていて、値崩れを起こしたりなかなか買主が見つからなかったりといった事態になる可能性も考えられます。
今後も使う予定のない空き家であれば、早めの行動をお勧めします。
参考:誰も住まなくなった実家はどうすればいいの?空き家を売却する4つのステップ
空き家を賃貸に出す
賃貸住宅として貸し出すのも課税対象外となります。また、その予定のある非居住住宅も免除されます。ただし、売却と同じく賃貸として入居者を募集してから一年以内に限られます。
特定空き家について
空き家には、先述したとおり固定資産税と都市計画税が課税されています。
住宅用地として使われている土地は、固定資産税が最大1/6の減額を受けることができますが、この減額制度が老朽化した空き家を増える原因にもなっています。
なぜなら、空き家を取り壊して更地にしてしまうと減額の対象外となり、翌年からの固定資産税が上がってしまうので、あえてそのままにしている所有者が多くいるからです。
放置されたままの状態が長期間続けば、倒壊による身の危険が近隣住民に及んだり、景観や不法投棄の問題も起こったりする可能性が高くなります。
そういった経緯から、2015年5月に「空き家対策特別措置法」という法律が施行されました。その中に「特定空き家」という定義が盛り込まれており、その定義は以下の通りです。
- 倒壊の危険がある
- 著しく衛生上の悪影響がある
- 管理が行き届いておらず近隣の景観を損ねている
- 近隣の住民の安全に危害が及ぶ可能性がある
つまり、長期間空き家の管理がなされず、近隣住民の身の安全や衛生面・防犯面での危険が及んだり、景観を著しく損ねたりすると国や自治体が判断した場合、「特定空き家」に認定される可能性があるということです。
「特定空き家」に認定されると、行政から改善の助言や指導が入ります。
それでも改善されない場合は、「固定資産税の特例」である減額の適用外となったり、罰金を科されたり、最終的には行政代執行での解体が行われることもあります。
その解体費用は所有者に請求されますので、百万単位での負担が発生します。支払いが滞ると、不動産や資産の差し押さえが行われる可能性もあります。
参考:空き家法(空家等対策の推進に関する特別措置法)って何?分かりやすく解説します!
空き家は早めの売却がおすすめ:まとめ
京都市が新たに施行するこの「空き家税」は、今後全国に波及していく可能性があります。
2024年に国土交通省により行われた住宅・土地統計調査の結果、空き家数は約900万戸で過去最多となり、全国の住宅の13.8%を占めていることが分かっています。
空き家問題は、京都市だけの問題ではなく全国的に深刻化しています。
京都市は普段住む人のいない空き家や別荘、セカンドハウスが増え続けた結果、若い世代が京都市内に住居を構えることができず、市外に流れてしまっています。
この現在も増え続けている空き家問題に対して、京都市のこの取り組みが上手くいけば、売却や賃貸を促す有効な手段の一つと判断されるでしょう。
空き家や別荘などを所有している方は、常に不動産の価格などの状況を把握し、対策しておくことをおすすめします。
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