小規模宅地等の特例ってなに?不動産売却時にも役立つ基礎知識

小規模宅地等の特例

「小規模宅地等の特例で相続税が安くなるってホント?」
「小規模宅地等の特例が適用される条件は?」

 

こんな疑問にお答えします。

相続した不動産を売却する際に「小規模宅地等の特例」が適用されると、相続税を大幅に抑えられます。場合によっては土地評価額が80%も減額されるため、売却する前に適用条件を確認しておきたいところです。

今回は、小規模宅地等の特例の適用条件をわかりやすく解説します。

記事の信頼性
監修者:毎日リビング株式会社 代表取締役・宅地建物取引士 上野 健太
不動産業者としての実務経験を活かし、売主の立場で記事を監修しています。
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小規模宅地等の特例とは

小規模宅地等の特例とは、適用要件に該当する土地を相続した際に、土地の評価額が減額される制度です。この特例が適用されると、相続税が大幅に抑えることができます。

なお、小規模宅地等の特例で減額されるのは、あくまでも「土地の評価額」です。相続税そのものが減額されるわけではありません。そのため、場合によっては相続税がゼロになる可能性もあります。

土地の評価額とは

土地の評価額とは、公的機関が公示した土地価格の指標です。「一物五価」とも言われる土地評価額の種類はさまざまですが、相続税を計算する場合には「相続税評価額」を使用します。

相続税評価額の計算方法は、下記のとおりです。

正面路線価×地積×各種補正率等

たとえば、相続税評価額が1億円の土地に小規模宅地等の特例が適用されれば、評価額が最大で2,000万円に減額されます。

参考:固定資産税の計算方法と不動産売却時の精算について【宅建士が解説】

小規模宅地等の特例が適用される条件

小規模宅地等の特例が適用される要件は、宅地の種類によって異なります。ただし、宅地の種類を問わず下記2つの要件は必ず満たしている必要があります。

  1. 被相続人または被相続人と生計を一にする親族が居住していた宅地等である(例外あり)
  2. 小規模宅地等の特例を受ける宅地等が建物または構築物の敷地である

①に関しては例外もありますが、②は絶対条件となります。特例を受ける土地には、建物や構造物がなければいけません。青空駐車場や資材置き場は適用の対象外です。
ただし、アスファルトで舗装されている駐車場は舗装が「構造物」と認められるため、特例の適用対象となります。

宅地の種類別適用条件を、詳しく見ていきましょう。

特定居住用宅地等

特定居住用宅地等とは、「被相続人または被相続人の生計一親族の居住用宅地」のことです。簡単に言うと、「亡くなった人、または、亡くなった人と生計を同一にしていた人が自宅に使っていた家の土地」ということになります。

適用要件は、相続人によって下記のように異なります。

区分

相続人

適用要件

被相続人の居住用宅地

 

・限度面積:330㎡

・減額割合:80%

被相続人の配偶者

無条件

同居の家族

相続税の申告期限まで居住し、相続開始から申告期限まで保有している

生計別親族

・相続開始前3年以内に本人および配偶者、本人の三親等内の親族や、特別な関係のある法人が所有する家屋に居住したことがない

・相続開始から相続税の申告期限まで当該宅地を所有している

・相続開始時に取得者が居住している家屋が相続開始前に持ち家となっていない

生計一親族の居住用宅地

・限度面積:330㎡

・減額割合:80%

被相続人の配偶者

無条件

生計一親族

相続税の申告期限まで居住し、相続開始から申告期限まで保有している

亡くなった人の配偶者は、無条件で小規模宅地等の特例の適用対象となります。生前に同居していなくても構いません。

亡くなった人と一緒に住んでいた親族も、特例の適用対象です。ただし、住民票が同じだけでは適用対象になりません。あくまでも「同居をしていた事実」が必要になります。

虚偽の申告をしても、税務署の税務官は徹底的に調べるので必ずばれます。場合によっては節税ではなく脱税として検挙されるので注意しましょう。

生計別親族は例外となるため、適用要件が複雑になります。適用対象となる生計別親族を簡単に言うと、「亡くなった人と別居していて、3年以上借家に住んでいる親族」です。この親族に適用される場合は「家なき子特例」とも呼ばれます。

なお、「生計一親族」とは、「家計に使う資金が被相続人と同じ親族」のことです。同じ家に住んでいても、それぞれに収入があり、預金口座を別々に管理している場合は「生計一親族」に該当しません。逆に、別居していても被相続人の資金で生計を立てていれば「生計一親族」になります。

特定事業用宅地等

特定事業用宅地等とは、「被相続人もしくは被相続人と生計一親族の事業用に使用されていた宅地等」のことです。特定事業用宅地等の場合は、事業承継要件と保有継続要件が決められています。

区分

事業承継要件

保有継続要件

被相続人の特定事業用宅地等

・限度面積:400㎡

・減額割合:80%

被相続人が当該宅地で行なっていた事業を相続税の申告期限までに引継ぎ、事業を継続している

相続税の申告期限まで当該宅地を保有している

生計一親族の事業用宅地等

・限度面積:400㎡

・減額割合:80%

相続開始前から申告期限まで事業を行なっている

 

特定合同会社事業用宅地等

特定合同会社事業用宅地等とは、「被相続人または被相続人と生計一親族の貸付事業を除く同族会社の事業用宅地」を指します。簡単に言うと、「亡くなった人が土地を同族会社に貸し出していた場合」ということです。

たとえば、亡くなった人の同族会社が飲食店を経営していた場合、その敷地を親族が相続して飲食店を継続すれば、小規模宅地等の特例が適用されます。

区分

法人役員要件

保有継続要件

特定合同会社事業用宅地等

 

・限度面積:400㎡

・減額割合:80%

相続税の申告期限時に、相続人が法人の役員である

相続税の申告期限まで当該宅地を保有している

 

貸付事業用宅地等

貸付事業用宅地等とは、「被相続人が不動産賃貸や駐車場などの貸付事業を行なっていた宅地」のことです。

区分

事業継承要件

保有継続要件

被相続人の貸付事業用宅地等

・限度面積:200㎡

・減額割合:80%

被相続人が当該宅地で行なっていた貸付事業を相続税の申告期限までに引継ぎ、貸付事業を継続している

相続税の申告期限まで当該宅地を保有している

生計一親族の貸付事業用宅地等

・限度面積:200㎡

・減額割合:80%

相続開始前から申告期限まで貸付事業を継続している

 

小規模宅地等の特例で知っておきたいポイント

ここからは、小規模宅地等の特例を受ける際に知っておきたいポイントを詳しく紹介していきます。

 限度面積を超える範囲は通常の評価額

限度面積を超える範囲については、通常の評価額が適用されます。たとえば、相続した特定居住用宅地等が400㎡の場合、330㎡までは80%減額、残りの70㎡は通常の評価額が適用されます。これらを合算した額が土地全体の評価額です。

小規模宅地等の特例を受けるための添付書類

小規模宅地等の特例を受ける際に、相続人が提出する書類は下記のとおりです。

  • すべての相続人を明らかにする戸籍の謄本
  • 遺言書の写し、または遺産分割協議書の写し
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 住民票の写し

戸籍謄本は、相続開始日から10日以降に作成する必要があります。印鑑証明書は、遺産分割協議書に押印したものを用意しましょう。

なお、特定事業用宅地等や特定同族会社事業用宅地等として適用を受ける場合は、それぞれ個別の書類が必要です。

小規模宅地の特例は建物にも適用される

小規模宅地の特例が適用されるのは土地ですが、その土地に建てられている建物が被相続人名義ではないこともあります。このような場合は、建物の名義人と貸借の条件によって適用要件が変わります。

建物の名義人

土地を無償で借りている場合

土地を有償で借りている場合

生計一親族

居住用:限度面積330㎡、減額割合80%

事業用:限度面積400㎡、減額割合80%

 

 

貸付事業用:減額割合50%、限度面積200㎡

生計別親族

適用されない

親族ではない第三者

 

小規模宅地の特例はマンションの相続でも適用可能

マンションにも小規模宅地等の特例は使えますが、あくまで土地に使える特例であるため、効果は限定的です。土地のウエイトが比較的大きい低層マンションであれば、申請を検討してみてもいいでしょう。

被相続人が老人ホームに入居していた場合の小規模宅地の特例

要介護認定または要支援認定を受けた被相続人が老人ホームに入居していた場合、自宅を賃貸していなければ小規模宅地の特例が適用されます。
適用の可否は、空き家となった自宅への入居時期によって異なります。

相続人

自宅への入居時期

適用の可否

生計一親族

老人ホーム入所前

老人ホーム入所後

生計別親族

老人ホーム入所前

老人ホーム入所後

×

 

小規模宅地等の特例を活用すれば相続税を減額できる:まとめ

小規模宅地等の特例は、相続税を抑えられる特例です。適用できれば土地評価額が80%も下がるので、相続が発生したら必ず適用要件を確認しましょう。

相続した土地の売却価格を確認したい場合は、不動産一括査定サイトの利用がおすすめです。

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