「共有名義の不動産はどうやって売却すればいいの?」
「そもそも共有名義の不動産は売却できるの?」
こんな疑問にお答えします。
不動産はその所有者を共有名義にすることが認められています。ひとつの不動産に複数の所有者がいるということです。
日常では特に問題が起こることはありませんが、その共有名義の不動産を売却することになった際は、様々な問題が起こります。
今回は共有名義の不動産を売却する場合の注意点や手順・方法について詳しく解説します。
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不動産が共有名義となる理由
不動産が共有名義となる原因ですが、いくつかのケースがあります。
一番多いのが、不動産を所有していた方が亡くなり、複数の方が相続するケースです。
例えば、所有者である父親が亡くなり、子どもたちに相続が発生した場合などがそうです。そのような場合、長男に不動産を、次男に預貯金を、といった形式で財産分与が行われることが多々ありますが、不動産以外に財産がない場合などは、その不動産を子どもたち全員の共有名義として相続することがあります。
その他にも、夫婦の収入合算で住宅ローンを組む際に共有名義として登記の手続きをした場合や、二世帯住宅を購入する際に親子で資金を出し合って、名義も親子の共有にした場合などが挙げられます。
単独名義にしたいと考えていても、その名義人の収入だけでは住宅ローンの審査に通らないなどの事情で、共有名義にするなどのケースが一般的です。
いずれも居住中は何の問題も起こりませんが、不動産を売却するとなった際に、簡単に事が進まなくなります。
共有名義の不動産を売却する場合、所有者の全員が同意しないと売却ができません。この点が共有名義の最大の問題となります。
共有名義の不動産売却に必要となる書類
共有名義の不動産を売却する場合、所有者の全員が同意しないと売却ができません。全員が同意したうえで売却を行う際は、何種類かの書類が必要になります。
まず、不動産の登記済権利証または登記識別情報が必要です。平成18年以前は登記済権利証、以降は登記識別情報が発行されます。
登記済権利証
平成17年の不動産登記法の改正前まで発行されていたもので、平成21年7月に完全廃止されました。(平成17年から平成21年までは移行期)登記済権利証は、それ自体が権利証です。
登記識別情報
アルファベットと数字の12桁のパスワードです。紙で発行されますが、このパスワードが権利証になります。
そのパスワードさえあれば、コピーでも控えでも問題ありません。
平成27年まではパスワードに一度剥がすと二度と付け直せない目隠しのシールが貼ってありましたが、現在は変更になっており、パスワードの紙を折り込んで隠す形式になっています。
次に、所有者全員の顔写真付きの本人確認資料、実印、印鑑証明書、住民票が必要になります。用意するタイミングは異なりますが、媒介契約時に揃えておきましょう。
顔写真付きの身分証がない場合はマイナンバーカードの作成がおすすめです。作成方法は下記でご確認下さい。
また、売却活動をおこなう際に、土地・一戸建ての場合は地積測量図と境界確認図があれば安心です。不動産を売却する仲介会社によっては、さらに別の書類の提出を求められるかもしれません。
いずれにしても、所有者となっている方全員の書類が必要となります。
売買契約を行う際には原則として所有者全員の同席が求められます。
しかし、共有者が複数いたり、遠隔地に住んでいる場合等でどうしても所有者全員が揃わない場合は、代理人を立てて代表者が取りまとめることで進めます。(その場合、委任状が必要です。)
代理人を立てる事情の多くは、遠隔地に住んでいる、病気やケガで入院している、介護施設に入所している、海外に渡航している等であり、「仕事が忙しくて時間がとれない」など、上記項目以外では認められません。
不動産の売却は大きな金額が動くものであり、それに関わる全ての方が慎重にならざるを得ません。それだけに、本当にどうしても動くことができない状況でなければ代理人を立てることは難しいといえます。
共有名義の不動産を売却する方法
自分の持ち分のみを売却する方法
どうしても共有名義の所有者全員の同意が取れない場合、自分の「持ち分のみ」を売却することは可能です。ただ、法律上は可能となってはいますが、実際にはそのような形式での不動産売却はきわめて珍しいケースです。
どうしても自分の持ち分だけでも売却したいのであれば、それを実行することは可能ですが、デメリットばかりが目立つことになります。
まず、権利関係がややこしい物件として扱われるため、売却価格は格段に低くなります。
購入した方にとっては、共同所有者の許可がなければ自由に使えないなどの弊害が予想されるため、売却が決まるまで時間がかかる可能性があります。売れないまま時間だけが経過することにもなりかねません。
また、共有名義の各所有者に無断で持ち分を売却した場合、所有者間でトラブルが起こる可能性は極めて高いです。そのため、現実的に事例は極めて少ないですし、お勧めできません。
もしかすると、共有者全員に「そこまでしてでも売却したいのか」と思わせることで、全員から売却の同意を得られることもあるかもしれません。
その効果を狙って、思い切って自分の持ち分のみを売却する行動に出るのも、共有名義の各所有者を説得するための強硬手段として使えるかもしれませんが、上手くいかない場合が多いです。
参考:【実家を兄弟で相続】ありがちなトラブルを6つのステップで解決
分筆登記をして「自分の持ち分のみ」を売却する方法
共有名義の不動産が土地の場合と、一定の地積(場所によりますが最低でも80坪以上)がある場合は「分筆登記」をして、土地を分割することができます。
自分の持ち分がその土地の半分の割合である場合、その土地の半分となる面積分を自分の単独所有の土地として登記し、残りの半分は従来どおり他の所有者の名義のままとなります。いわば、ひとつの土地を2分割してその片方を自分だけのものにするわけです。
共有者が2人の場合や、不動産全体の評価額と地積を均等に分割出来る場合は円滑に進められますが、土地が変形地であったり、道路幅員が4.0m以下の場合、共有者が3人以上の場合等は分筆登記をおこなうまでに話がまとまらない場合が多いのが現実です。
共有者が2名の場合や、直系親族のみの場合はスムーズに分筆登記ができるケースが多く、自己所有の不動産売却として、手続きも問題なく進むことが多いです。
ただし、分筆をする際は、その土地の共有名義の所有者全員の承諾が必要になります。
その土地を分筆する場合は土地の実測が必要です。土地隣接者と道路管理者(住所地の区役所の担当者)が境界立会いをして境界を確定させます。その後、土地を分割して法務局に登記をおこないます。
登記が完了すると分筆登記は完了します。実測費用に約40~50万円、登記手続き(地積更正登記、分筆登記)に約15~20万円の経費が必要です。
その費用負担は共有者と按分できればよいのですが、現実的には分筆登記を申し出た方が負担することが多いため、事前に見積書や資金などの準備が必要です。
参考:不動産売却前に知っておくべき「分筆」について3つのポイントで解説
共有者に自分の持ち分を買い取ってもらう方法
共有名義の所有者に自分の持ち分を買い取ってもらい、その方の単独所有物とする方法もあります。
たとえば、相続によって2人兄弟の共同所有となっている家であれば、どちらか一方がその家に住み続けることとして、もう一方の所有者に持ち分に応じた金額を渡して、所有権を買い取る場合などです。
この方法であれば、双方が合意のうえで取引を進めれば短期間で契約がまとまります。新たに買主を探す必要もないため、スムーズに事が運びます。
ただ、買取金額に合意がなされないなど、条件面で折り合いがつかない場合は、時間がかかることになります。
それでも話し合いがうまく進めば、比較的短期間で取引が終わりますが、折り合いがつかない場合は、普通に売却するよりもかえって時間がかかることにもなりかねません。
共有名義を単独名義に変更して売却する方法
共有名義となっている不動産を所有者のうち1人の名義に変更して売却する方法もあります。単独所有の不動産売却の場合、契約においての手続が簡素になり、売却にかかる時間も短くなるでしょう。
ただ、この方法をとる場合、贈与税が課せられる可能性が高くなります。共有名義を単独名義に変更する場合、一方の所有者が他の所有者から、その持ち分を買い取る形をとる方法が一般的です。
その際、相場どおりの金額やそれに近い額で売買取引が行われたのであれば問題はありませんが、対価なしでの譲渡や、「形だけ払ってくれればいいから」と極端に低い金額での売買を行った場合、それは正規の売買とはみなされず、「贈与」であると判断されてしまいます。
たとえ親族間であっても、贈与を受けた際には贈与税を納付しなければなりません。贈与税は税金の中でもトップクラスの高い税率となっており、名義変更をする場合の大きな注意点であり、デメリットともいえます。
また、名義を変更した場合、所有権を移転する必要があるため、単独名義となる方には不動産取得税や登録免許税の納付が必要となりますので気を付けましょう。
参考:不動産売却で贈与税がかかるってホント?5つのケースで徹底解説
共有名義のまま売却して、売却金を分配する方法
共有名義のまま不動産を売却して、得られた売却代金を所有者全員でその持ち分の割合に応じて分配する方法です。売却にかかった費用も同様に持ち分割合に応じた負担をすれば揉めることはありません。
この方法が最も現実的に多い売却方法です。相続した不動産を現金化して分配する場合や夫婦の共有名義となっている不動産を離婚が原因で手放す場合などによく用いられます。
離婚後、どちらかがその家に残るのであれば、退去する側は持ち分の金額を残る側に支払うなどで精算する必要があります。
しかし、それだけの金額を用意できないことも多くありますし、また、住宅ローンの残債がある場合は話がややこしくなってしまいます。
そこで、その家を手放し、売却金額を分配して、新しい生活を始める資金にする方法がよく用いられています。
その場合、売却金額が住宅ローンの残債よりも低くなる可能性もありますので気をつけましょう。
共有名義の不動産売却はプロに相談しよう:まとめ
共有名義の不動産売却は、通常の売却よりも時間と手間がかかります。また、わかりにくい点も多くあります。
それだけに、高いスキルと豊富な知識を持った不動産仲介業者、営業担当者に売却を依頼することが重要です。
不動産会社選びで、家は数百万円「売値」が変わります。
査定価格は不動産会社によって違うので、高く・早く売るなら、複数の不動産会社の査定価格を比較することが大切です。

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